ベル・エポックの夏涼み 2010-06-15 ノルマンディーの作家と食 他 0 水を氷にするには、水を湯にするよりも時間がかかる。困難なもの、希少なものはあがめられるのが世の常で、1867年のパリ万博の際にイタリアからやってきた製氷機は大成功を収めた。とはいえ、製氷機で作った味のない人工氷は食用には人気がなく、ノルウェーやフィンランドの氷河から切り出しては [...]
プルーストの味を求めて –7 2010-06-01 ノルマンディーの作家と食 他 0 『失われた時を求めて』の語り手が恋に落ちるときは、まずはその人物の?うわさから入ることが多い。後年、話者と一緒に暮らすことになるアルベルチーヌに関しては、「大きくなったらとても《ふしだら》な女になる」(井上究一郎訳)というのが、語り手が初めに聞いた評判だった。 このアルベルチー [...]
プルーストの味を求めて –6 2010-04-29 ノルマンディーの作家と食 他 0 『失われた時を求めて』をひもといてページを追うとき、ひときわ気になるのが食べ物からふくらむイメージの豊富さだ。食べ物のもつ匂いや味、そして色は、自然のあらゆる現象や登場人物のキャラクターに結びつけられる。プルーストにかかると、身近な野菜や果物といった食べ物が、なにか特別な意味を [...]
早く早く早く! 2010-04-15 ノルマンディーの作家と食 他 0 ●Vite, vite, Bistrot! 早く早く早く! Bistrot(またはbistro)の語源は多説あり、その真偽が今もなお問われている。酒を出す飲食店を意味するポワトゥー地方の方言 “bistraud” か、北部フランスの “ma [...]
ハーブと医食同源 2010-03-15 ノルマンディーの作家と食 他 0 調理器具が誕生した石器時代より、ハーブは料理に用いられてきた。一番古い記録は古代エジプトのヒエログリフ。古代ローマもハーブを賞賛した。しかし正確なハーブの効用を知るには中世を待つことになる。数々の治療法を発案したノストラダムスの原理には、4大風味である甘塩酸苦のうちハーブによっ [...]
プルーストの味を求めて –5 2010-03-01 ノルマンディーの作家と食 他 0 『失われた時を求めて』の語り手の叔母レオニの女中だった料理自慢のフランソワーズは、後年語り手一家に献身的に仕えることになる。彼女が最も得意としているデザートは、語り手の父の好物だったチョコレートクリームだった。ただ、食にかけては「芸術家」である彼女は、「すぐれたオペラ歌手が歌の秘 [...]
スパイスの歩みー大航海時代以降 2010-02-15 ノルマンディーの作家と食 他 0 コロンブスはインドへのルートを探索中にアメリカ大陸を発見、中米はスパイスの宝庫だった。ポルトガルの航海士バスコ・ダ・ガマはアフリカ南岸経由で東インドへの航路を切り開き、コショウと香料を獲得。1520年にマゼランがヨーロッパから西へ向けてのルートを模索していて発見した海峡こそ現在 [...]
プルーストの味を求めて –4 2010-02-01 ノルマンディーの作家と食 他 0 『失われた時を求めて』の語り手マルセルに一目置かれていた女中のフランソワーズは、そもそも語り手の叔母レオニに仕えていた。パリに住む語り手一家は、復活祭などの休みになると汽車に乗ってレオニの住む田舎町コンブレーを訪ねるが、この滞在中に一家のために食事を準備するのがこの女中だった。 [...]
スパイスの歩みー中世から大航海時代 2010-02-01 ノルマンディーの作家と食 他 0 中世のヨーロッパにおいてスパイスは希少で、ほんの微量でも目の飛び出るような価格で売られていた。スパイスは古い食材の匂いや味を隠し、殺菌・保存し、消化を促し、病の治療に役立つので、諸国はこの万能なスパイスをこぞって入手したがった。ヨーロッパはハーブは豊富でもスパイスは育たないため [...]
スパイスの歩みー古代から中世 2010-01-15 ノルマンディーの作家と食 他 0 古代ギリシャ、ローマの時代に中国、インド、エジプト発祥のスパイスがヨーロッパに上陸。陸は中国から黒海まで、そして海を渡って地中海へと結ぶルートは紀元前より存在した。絹とスパイスの街道、シルクロードの隊商たちがインドのマラバル海岸から胡椒(こしょう)を、インドネシアのモルッカ諸島 [...]