秋：そうみたいですね。僕は10年ぐらいのスパンで地方を回ろうと思っていました。１年、２年ずつぐらいで色々な地方を回れたら、と。なのでパリを選ばずにまずはリヨンから始めました。
Q：リヨンはどうでしたか？
秋：いや、いいところでした。地方料理もしっかりしているし。ああいうものは実際に見て、本場で食べなきゃダメですね。わからないこともありますし。
Q：いや、私はお店の砂糖入れがアルザスのものだったので、アルザスにもいらしたのかな？と思ったんです。
秋：アルザスにもパリに戻ってくる前に行きました。
Q：やっぱりそうだったんですね。福岡では料理学校へ？
秋：料理学校へは行っていません。福岡のフランス料理の店に入りました。
Q：フランス料理に憧れた、というかフランス料理をやろうと思った理由は？
秋：フランス料理に憧れていたわけじゃないんですけれど、料理を始める前は素人なので、漠然と家で料理を作ることが好きだったというだけです。イタリア料理もフランス料理もすべて洋食、という知識しかありませんでした。ただ和食や中華は自分の中にはなかったです。そこで洋食、と考えた時知り合いのシェフに相談したら、その方の考えではイタリアかフランスのどちらかと迷うならば、フランス料理から始めるともしかして自分に合わないと思った時にイタリア料理へ行けるんじゃないか、ということでした。
Q：やっぱり基礎をきちんと学ぶのならば、フランス料理だということでしょうか？
秋：いやあ、そういうことではないと思います。イタリア料理は全く別のものだと今は認識していますけれども、あの頃は全く知識もなかったので僕にアドバイスをくれた方がフランス料理の方だったのでフランス料理を押してくれたのだと思います。あの時はそのシェフの話を真に受けて、じゃあフランス料理から始めよう、と。そしてその方から紹介いただいたフランス料理のレストランで働き始めました。
Q：料理を目指そうと思われたのはいつですか、高校時代？
秋：いえ、僕大学を卒業しまして、大学の就職活動中に、活動をしながら色々面接に行きながら、自分が会社勤めをするイメージが湧かなかったので、だったら興味もあるし、家で少し触っている料理を仕事にしてみるのもいいかな、と思って。本当に単純な、というか軽い動機からです。
Q：就職活動はどういった方面で？
秋：システムエンジニア系です。
Q：ご自身が社会というか会社システムの中に入るのは向かないだろう、と思われたということですよね？
秋：向かないというか全く自分でも想像できなかったですね。こう、朝出勤して、スーツ着る自分の姿が。
Q：福岡で就職活動をされた？
秋：そうです、福岡が好きなんで。
Q：すると福岡から、大阪、東京などどこにも行かずにフランスを目指された？
秋：そうです。
Q：フランスへ行きたい、と思ったのはやっぱり本場で、ということですよね？
秋：福岡で働いたレストランの中に、自分で積み立てて旅費は払うんですが、１年に１度フランスで食べ歩きをするという研修旅行がありました。その中で１度フランスへ来て、パリでも地方でもレストランを食べ歩いて、今まで自分が持っていたイメージ、そしてフランス人が作るフランス料理とみんなが言っていたものとは全く違うものが食べられました。その頃はフランス人が作るものは塩辛いとか、フランス人の食事は質素だとか、そういうイメージがあったんですけれど、レストランに行ったら日本人が食べても美味しいと思える料理が出てくるんだと思って。
Q：質素だとか塩辛い、というイメージはどこから？
秋：本などで。家庭で食べる料理は日本でのように何皿も出ないとか、大皿をみんなで分けるという話も聞いていましたし、フランスで食べる料理は塩辛くて、みたいな話も行ったんだか行かないんだかの人から聞いてはいました。そういう情報からイメージを自分で持ったのだと思います。
Q：当時ご自身は日本のフランス料理店でお仕事をしていらした。日本のお店で出すフランス料理は、実際にフランス人が食べるものとは違うという認識でしたか？
秋：いえいえ、家庭料理とレストランの料理はやっぱり違うので。今話をした「質素」というのは家庭料理に限ってのことです。でも最初にフランスへ来てフランス人の家でご飯をご馳走になったときには、そんなに塩辛くもなく、自分が抱いていたイメージとは全く違うものだったので、魅力を感じてフランスのレストランで働いてみたいな、と思いました。
Q：食べ歩きをされたのはやっぱり星付きのレストランだったんですか？
秋：そうです。
Q：どうでしたか？
秋：美味しかったです。素晴らしかったですね。
Q：どこに行かれたか覚えていますか？
秋：当時はまだLe Clos des CimesだったんですがRégis Marconレジス・マルコンさんのお店とか、のちに働くことになるLa Pyramideにも行きましたし、Troisgrosトロワグロにも行きましたし、リヨンにあった一つ星の店にも。色々行かせていただきました。ブルゴーニュにもGeorges Blancジョルジュ・ブランの店にも。毎日星付きのレストランで食事をしました。
Q：じゃあかなりお金を貯めた、というか積み立てたんですね。
秋：そうです、その時のために。まあ年に１度のことなんで。
Automne
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