ポワチエ行政裁判所は10月3日、シャラント県など仏西部4県に建設が予定されている計15の貯水池の建設許可を、水の節約に貢献しないとして取り消した。大規模農業経営者が加入する水管理協同組合とヴィエンヌ県庁はボルドー行政裁判所に控訴する構えだ。ただし、控訴期間中は工事を進めることができない。
この建設許可取り消しは、シャラント、ドゥ・セーヴル、シャラント=マリティーム県にまたがる地域の9つの貯水池と、ヴィエンヌ県北部の6つの貯水池の建設計画に関するもので、2021年に建設許可が下りた。この15の貯水池で合計312万㎥の農業用水を貯めることができ、1つの大きさは2.8haから6ha。地元の環境保護団体、小規模農家連盟、市民団体、野鳥保護団体などが行政裁判所に訴えていた。
行政裁判所は、シャラント、ドゥ・セーヴルなど3県の貯水池については、環境への影響についての調査が不正確で不十分、水の節約にならないと判断。ヴィエンヌ県の貯水池については、予定される貯水量が多すぎ、環境保護法に規定された資源の持続的管理に関して過誤があるとした。また、両方の計画について、水の豊富な冬季に汲み上げた地下水を貯めて、水の不足する夏季に汲み上げ水を少なくするという計算は2000年代初めのデータに基づいており、干ばつの進む近年のデータを踏まえておらず気候変動の影響に適応していないと結論づけた。
この4県ではここ数十年で水不足が常態化しているにもかかわらず、2017年以降、93の貯水池計画が国と地域圏の承認を得ている。原告側は、たとえば、ヴィエンヌ県の計画の場合、2009~18年の平均値より汲み上げ量は30%増になり、「大貯水池は水の節約になるという建設側の情報が虚偽であることが証明された」と判決に満足の意を表した。
建設反対派と治安部隊が3月に激しく衝突したドゥ・セーヴル県サント・ソリーヌの巨大貯水池(10ha / 建設終了)の問題はまだ記憶に新しい。この貯水池はすでに建設が終了しており、3日の判決には含まれないが、小規模農家連盟らが巨大貯水池建設および反対運動への仏政府の弾圧について国連人権委員会に訴えたのを受けて、国連特別報告者6人が5月に仏政府に送った書簡では、水資源管理は土壌に水を保持する政策(生垣、植物で覆う、化学肥料の減少など)や水の節約を優先すべきと大貯水池の有効性に疑問が提示された上、仏政府の強硬な対応も批判されている。
また、仏会計監査院も7月17日、フランスの水資源の量は1990年代から2002~18年に14%減少し、2050年には30~40%減少すると予想し、水不足への唯一有効な対策は汲み上げ水量の減少と水使用の合理化だという見解を明らかにしている。大貯水池計画については、農業用灌漑水の量を減少させず、冬季の降雨不足や数年続きの水不足にはまったく無効と警鐘を鳴らしていた。
このように政府の支援する大貯水池計画は、現在や将来の干ばつに備えた水資源の保護の観点からすると、すでに時代遅れになっているのは明らかだろう。今年夏も記録的な猛暑と干ばつを記録したフランス。農業用水が不足するから貯水池を作るという従来の考え方から脱して、根本的な節水策にシフトするべきではないだろうか。(し)