野田達也さん(33歳)
シェフの中にはいろんな前職を持つ人がいるが、野田さんの経歴は珍しいほうだろう。料理人になる前は、地元福岡の半導体関連の企業でロボットの開発に携わっていたという。深夜におよぶ残業をこなすなか、ふと「このロボットに囲まれた無機質な環境の中でずっと仕事をしていくのか?」と疑問を感じ、「人を笑顔にする仕事がしたい!」と料理の道を志すことに決めた。
調理専門学校でゼロから学び、その後東京の有名店で働いていたが、一度本場で料理がしてみたいと思い立ち、6年前にワーホリビザでフランスへ渡った。雑誌で見かけたPassage53の料理に心惹かれ、門戸を叩く。「毎日、泥のようになるまで働きました(笑)。でもあの時に学んだことは、自分の大きな財産です。日本人であるというアイデンティティを見直すきっかけになったのも大きいですね。なにしろ味噌や醤油など基本的な調味料の醸造法も知らなかったので、日本に戻ってからは基礎から知識を身につけました」。
帰国後は数年に渡り、ガストロノミーからビストロ、ケータリングまで幅広く経験を積んだ。次のステージを探していた頃、パリに和牛専門レストランOYAをオープンさせる話が舞い込み、1年半前に再び渡仏した。
立ち上げから始めたが、全てがゼロからのスタート。パリの業者さんとの信頼関係もなく、仕入れも困難で壁の高さを感じた。そして、昨年6月に無事オープン。「まわりからの評価を意識せず、常に視野を広く自分の料理を追求することを心がけています。14席のカウンターだけの店ですので、フランス人の味覚を意識するというよりも、お客様お一人お一人の反応を見て、その場でお仕立てしています。料理の技術や見せ方よりも、愛情を込めておもてなしをしているのがお客様に伝わればうれしいです」。(恵)
ムニュ・デギュスタシオン 68ユーロ
スペシャル・デギュスタシオン 120ユーロ
ÔYA Paris
Adresse : 24 galerie Montmartre, 75002 ParisTEL : 01.4233.7812
アクセス : M° Grands Boulevards
火昼・日月休 12h-14h30/19h-23h