セーヌ川を渡るたびに、ふぅーっとため息が出る。橋から眺める空と雲、その美しさにパリで暮らす幸せをあらためて感じるからだ。とはいえ、パリは家賃や物価が安かったらもっといいと思うし、メトロ13番線の混雑なども、パリ交通公団にはぜひとも早急に改善してほしい問題だ。
国立統計経済研究所の調査では、イル・ド・フランス地域圏から地方へ、毎年約23万人が移住する。管理職向け就職情報サイトのアンケートでは、80%の管理職がパリ脱出を希望し、そのうち94%が5年以内に実行に移すことを考えている。56%は収入を減らしても、48%は職業を変えても、35%は役職が低くなってもいいから他都市への移住を欲するという。
そんな人たちのために、11年前から毎秋、パリの元証券取引所の建物で《地方就活フェア》も行われるようになった。ネット環境の充実や、TGVのさらなる高速化などで、アクセスしやすくなった自治体や企業などが、人材を探しにやって来る(”Parcours France”は今年は10月4-5日)。
隣の芝は青く見えるというけれど、やっぱりパリとは違う魅力がある地方都市。23万人のパリ脱出者たちは、どんな魅力を感じて移住するか。どこに行くのか。経緯や新しい土地での生活について聞いてみた。(集)
取材と文:編集部