『 MA VIE DE COURGETTE 』
幕開けから良い映画の予感がする。一人の少年が夕陽が差し込む屋根裏部屋の床で絵を描いているシーンだ。もうそれだけで、この少年の孤独を感じさせる名場面だ。
クロード・バラ監督 『MA VIE DE COURGETTE / 僕の人生、ズッキーニ』はフランスでは珍しいクレイ・アニメ。もっとも人形の素材がクレイ(粘土)かどうか定かではないが、人形を1コマづつ動かして撮影してゆく手法だ。
クルジェット少年(10歳)は父のことを知らない。母はアル中だ。ある日、母が梯子段から転落死、その事故の責任の一端が自分にあることを少年は胸に秘め、孤児院へ。孤独だった少年に5人の仲間ができる。しかし仲間入りの儀式はなかなかシビアーだ。特に兄貴挌のシモンは彼をパタット(芋)と呼んでいじめる。イカールという本名があるものの、母にクルジェット(ズッキーニ)と呼ばれていた少年はこの名前に愛着があり、シモンに抵抗する。 ある日、カミーユという新入りの少女が孤児院にやって来る。クルジェットと彼女はすぐさま意気投合し(初恋?)互いの打ち明け話をする仲になる。ところがカミーユの意地悪な叔母が、彼女を引き取ることで手にする国からの扶養手当を狙って彼女を強引に引き取ろうとする。しかし仲間の機転で難を逃れることができた。持つべき者は友なのだ。
一方、クルジェットを孤児院に連れてきた刑事のレイモンは、彼の後見人的存在になっていた。実は彼も孤独なやもめ暮らし。レイモンはクルジェットとカミーユを引き取って新しい家庭を築くことを考える。クルジェットは嬉しい反面、仲間と離れるのにも躊躇がある。自分たちだけ幸せをつかんでいいのか?そんなクルジェットの背中を押してくれたのがシモンだった。
このアニメのキャラの造形がカワイイ系でないのが面白い。かえって愛着がわく。背景の色のトーンもたそがれ系だが、物語は希望に向かっている。(吉)