●FEMIS監督科トマ・グルニエさん
名門映画学校FEMIS(1985年まではIDHEC)が揺れている。昨年、87%の学生が一週間授業を拒否してストに参加。教育プログラムについて自主的に話し合う場をもうけた。いったい内部では何が起こっていたのか? FEMISは変わるべきなのか? ストの中心人物であり未来の大監督候補のトマ・グルニエさんに話を聞いた。
「一昨年、パリに滞在中だったタランティーノ監督が『イングロリアス・バスターズ』のラッシュを校内でスクリーニングさせてほしいと頼んできた時、学校側は断った。この事実は些細なことだけど、学校の姿勢をよく表していたと思う。つまりFEMISは現実世界と切り離されて存在してるということ。パリには世界中から素晴らしい監督が集まってくるのに、みな近くを通り過ぎていくだけ。学校は外界に対して開かれていないから、僕らは象牙の塔に住んでるみたい。生徒の作品が外部に見てもらえる機会も少ない。伝統的にある種の映画作家的な作品作りを奨励されるから、卒業してからは映画業界の現実に対応できず、そのギャップに苦しむことになる。
授業も短編の勉強ばかりで、まるで短編専門の教育機関みたい。授業プログラムも成り行き任せで無意味に生徒を疲弊させる。映像教育に対する確固たるヴィジョンを持った人が学校を指揮するべきだけど、残念ながら必ずしもそうではない。家族に国立映画センターの要人がいる人が重要ポストに居座ってたり、20年も現役でない作家が脚本の授業を担当してたり。たまに外部から現役の有名監督がスタージュの指導に来るけど、期間が短か過ぎて実りがあまりないのは残念。僕の時はクラピッシュ監督が3日間来たけど、「いいね」と笑って手を握り帰っていっただけ(笑)。それに僕たちの意見に真剣に耳を傾けてくれていたクロード・ミレール監督は、昨年FEMISのプレジデントの職を解任された。彼はその前にプレジデントだったパトリス・シェローと違って、きちんと学校にきて仕事をしていたのに。これからどうなるかって? 今が過渡期だから動きを見守ってるよ」(聞き手:瑞)