●Prosper et George
フランス19世紀の女流作家ジョルジュ・サンド(1804-76)は、18歳の時に男爵夫人となるが第二子の出産直後夫と別居し、作家としてデビューしてからは男装して社交界に出入りしたり、多くの男性と恋愛関係を持つ自由な女性として名を馳せた。時は1833年、サンドの人柄と才能を好奇の目で見ながら接近するのは『カルメン』を生んだ作家であり歴史建造物監督官でもあったプロスペル・メリメ。はじめはメリメのことを「たいしたことない作家」と言っていたサンドも、メリメからのしつこいアプローチに折れ、次第に彼に惹かれていく。
19世紀、フランスの文壇は男性上位といっても間違いがなかった。Georgeと最後に”s”をつけず男性の名前と区別したのも、この男性社会への挑戦の気持ちからだ、とサンドはメリメに語る。文壇の集まりの話を面白おかしくメリメは語って聞かせるが、その集まりに「女だから」招かれないことにサンドは憤りを感じる。「私は自分の血と肉を疲弊させながら作品を生み出しているのに、あなたたち男性ときたら…」。ペンをとっては嘆息し、またペンをとりなおすサンドだが、制作への渇望と同時にメリメとの逢瀬(おうせ)から自分が得る女性としての「よろこび」を否定することはできない。逢瀬を重ねる日が数日続いたころ、二人の関係はぎくしゃくしてくる。メリメは「あなたにはもっと才能のある、そして庇護(ひご)が必要な芸術家が必要だ、例えばショパンとか…」。 泣き叫ぶサンドにもこの関係が長続きしないことはわかっていた…。
この舞台を一緒に観た友人は、サンド役を演ずるミレン・プラディエがサンドの肖像画と似ていないことを気にしていたが、男装はしても実はとても「女性らしい」サンドの内面を、プラディエが実によく演じていたと私は思った。演出はティエリー・ラヴァ、ジェラール・サヴォワジアン作。(海)
Théâtre Lucernaire : 53 rue Notre-Dame-des-Champs 6e 01.4544.5734.
17日迄。火-土18h30。15?- 22?。