ブルカ。
上の写真のように、女性が顔を含め体全体を覆うブルカは、元々はアフガニスタンのパシュトゥン族の伝統的衣装だった。それがイスラーム急進派タリバン政権時代に義務づけられるようになる。フランスでこのブルカをまとっている女性は、イスラームのスンナ派の中でも原理主義的で厳格な規律を課すサラフィストなどに属する。その数を、オルトフ内相はフランス全国で1900人と述べたが、サラフィスト専門家サミール・アムガール氏は、昨年夏に内務省情報局が発表した367人か、500人前後という数字が近いと言う。このブルカを公共の施設内だけでなく公道からも追放することを法律化するかどうかで論争が続いている。新聞や雑誌もこの論争に熱心だが、ブルカの写真といいながらも、目だけを出して全体を黒い布で覆うニカブ姿の写真だったりと混乱がみられる。
1月17日、与党UMPのスポークスマン、グザヴィエ・ベルトラン氏は「ブルカは女性にとってろう獄。法律で禁止しなければならない。その法律に、ブルカを着ている女性はフランス国籍を取得できないという条項も設けるべきだ」と発言。これに対し欧州エコロジーのダニエル・コンバンディット氏は「ブルカを着ているフランス人からは国籍をはく奪するのか」と反論。事実イスラーム専門家ベルナール・ゴダール氏によれば、ブルカをまとっている女性は「自発的にブルカを選んだ人がほとんど。(…)多くはフランス国籍を持っている」としている。また中道派のエルヴェ・モラン現国防相も、こうした与党代表の行き過ぎ発言に釘を刺した。
モラン氏は、国家の非宗教性や女性の尊厳を盾にとってブルカ着用を禁止することは、それが見た目にどれだけショックを与える衣服だとしても不可能であると語る。「女性の尊厳侵害ということに関しては、私たちが(イスラームの人たちと)同じような羞恥心を持っていないことに由来するさまざまな侵害がある」。たとえば(下着などの)広告では、女性が「性欲の対象」に変えられてしまっているではないか。また「売春は、ブルカ着用以上にひどい現代の奴隷制度である」。さらに家庭内暴力でフランスでは毎年150人以上の女性が亡くなっていることにも注意をうながしながら、「このブルカに関する論争が、イスラーム教徒たちをさらに公に非難する口実になってはいけない」と強調。全面的な禁止は避け、市役所での結婚式とか、学校に母親たちが子供たちを迎えにくる時とか身元確認がどうしても必要なケースに限って、顔を見せることを義務づけるなどの措置をとるべきだとする。
アムガール氏は、ブルカ禁止法が施行された場合、家に閉じこもりぱなしになったり、フランスを離れてイスラーム諸国に移民しようとする女性が出てくるだろうと推定している。(真)
ニカブ。