「フランス人であるということは、フランス語を話し、ラ・マルセイエーズを歌い、ギ・モケの手紙を読まなければならないことなのか? だとしたら馬鹿げたこと。ラ・マルセイエーズを歌うことが馬鹿げているというのではない。フランス人のアイデンティティをこんな風に決めてしまうことが馬鹿げているのだ。(…)フランス人であることは、第一に革命的であることだ。(…)今のシステム、路上で暮らしている人がいること、テレビが投げつけるイメージ、政治家の人心操作や洗脳に、みんな慣れきってしまっている。私たち自身、私たちの先入観、安易な考え方と闘わなければならない」と言い放ったのは、元サッカー選手、エリック・カントナ(43)。彼は、ホームレス支援団体〈Fondation Abbé Pierre〉 に依頼されてホームレスのポートレートを撮り続け、最近写真集を出した。その発売記念の記者会見でたまっていた怒りを抑えることができなくなったようだ。
カントナは、1966年5月マルセイユ生まれ。1983年、オクセールチームのFWとしてフランス1次リーグにデビュー。歯に衣を着せない発言が重なって試合中止の処分を受けることが多く、サッカー選手として本格的に開花するのは英国に渡ってから。1992年から97年にかけて、マンチェスター・ユナイテッドでの活躍ぶりは伝説的。頭をそり、ユニホームの襟を立て、みごとなゴールを決めるカントナを、英国ファンは「Eric the King 王者エリック」と愛した。サッカー引退後は画家、俳優の道を選ぶ。ケン・ローチ監督の『Looking for Eric』では自分自身の役を好演し、昨年のカンヌ映画祭で注目された。(真)
写真:左はケン・ローチ監督、右がエリック・カントナ。