暑い日が続くようになるとテニスのローラン・ギャロス杯。フランス人の多くが、テレビの画面を通し赤っぽいクレイコートを行き交う黄色いボールを追う。そんな視聴者の耳に響く歳時記の一つといってもいい声の持ち主はネルソン・モンフォール。どんな炎天下でもスーツにネクタイ姿、どこか腹話術の人形を思わせる真っ白な歯を見せての笑顔。「こんなスタイルは人目を引くためではなく教育のせいだ。父はアメリカ人で母はオランダ人、遅くなってできた一人っ子だったからね」
試合後の選手に、英語、時にはスペイン語でインタビュー。かなり強い米国訛りの英語で質問を発し、答えが終わらないうちにさっさとフランス語に訳していく。「あれは通訳というよりコメントに近いものだから。そしてチリのリオス選手とかアルゼンチンのコリア選手とかが、下品なコトバを使うと、聞かなかったことにして訳さない。タチが悪いのは女子選手。男子選手は素直に負けを認めることが多いが、女子選手はライバル意識が強く、破れた相手をほめることはほとんどない。特にロシアの女子選手はひどいなあ」
1954年にブローニュ・ビヤンクール市で生まれる。政経学院(Sciences Po)を卒業してテレビ界入り。テレビ初インタビューはテニスのマルティナ・ナブラチロワ選手だった。国際フィギュアスケート大会の実況も得意で、フィリップ・キャンデロロ選手とも仲がいい。6月半ばすぎから、彼と二人三脚で、やはり夏恒例、町対抗運動会といった感じの人気テレビ番組〈Intervilles〉を司会することになっている。(真)