1999年、音楽学者のジャン=ピエール・コンベが中心になって、クラシック音楽のレーベル〈アルファ〉が誕生。パーセル、クープラン、バッハといったバロックの作曲家の作品を中心にし、ドメニコ・ベッリなど、ほとんど知られていなかった作曲家の紹介にも力を入れている。ボクの愛聴盤は…。
Domenico Belli
ベッリはフィレンツェで活躍していた作曲家。同時期のモンテヴェルディがポリフォニーの中から緊張感あるドラマを引き出していったのに対し、ベッリは古典ギリシャの詩が持つ力を、独唱と簡潔な伴奏で解き放つ。「私の心は沈黙の中で燃えている…」。ギエメット・ロランスの熱唱は、ジャンルはまったく違うけれど、アレサ・フランクリンのソウルフルな歌を思い出させる。
Heinrich Ignaz Franz Biber
“Mysterien Sonaten”
ビーバーはドイツのカトリック教会音楽家で、たくさんの声楽曲を書いているが、この曲は、イエスの生誕から死、そして聖母昇天までをバイオリン、ヴィオル、ハープシコードだけでたどるという作品。受胎告知の神秘な言葉を前にしたリアのふるえ、十字架上のイエスへのいたわり、聖母昇天を祝う舞踏の楽しさ…。アリス・ピエロのバイオリンに心をまかせたい。
Johann Sebastian Bach
Concerts avec plusieurs instruments 1″
〈カフェ・ジンマーマン〉は、 このレーベルの核ともいえる、各楽器のパーツを最大限に切りつめた室内楽団。それだけに各奏者の自発性や、音楽する喜びが演奏の中に溢れる。バッハの協奏曲第1集は傑作。特にブランデンブルグ第5番。中低音が落ち着いたあゆみをきざむ中で、バイオリン、フルート、ハープシコードが弾むような呼吸で応答する。第1楽章のかの有名なハープシコードのカデンツァでのセリーヌ・フィッシュの演奏は、他を寄せ付けない名演。