春になると、生まれたばかりの子山羊に乳を与えるために、母山羊の乳房はぱんぱんにふくらむ。その子ヤギたちが離乳するころから作られる山羊乳チーズは4月中旬くらいから食べごろになる。山羊乳チーズは冷凍乳で1年中作られているけれど、やはり〈lait cru〉と明記された生乳チーズの味にはかなわない。
山羊乳チーズはロワール川沿いで作られているものが名高いが、この小さな円筒形のシャビもロワール川に面するロワール・エ・シェール県で作られている。形はポワトゥー地方の山羊乳チーズ、シャビシュー・デュ・ポワトゥーによく似ているが、こちらは、灰青色の木炭粉がまぶしてある。表面に薄く灰色のカビも見えるが、これをとってはいけない。木炭粉、カビごと切り分けて味わいたい。
ほどよく熟成された真っ白な身は、密で弾力があり、口に含んでゆっくりとかみしめたい。山羊乳チーズ特有の酸味もほとんどなく、軽い塩味が上品で、アーモンドを思わせる柔らかなクリーミー感が残る。あるかなしかの灰の風味がアクセントだ。(真)