614号で紹介したファデラ・アマラ都市政策担当相(43)は、10月9日、ラジオのインタビューに答えて「移民の娘として言いたいのは、右派も左派も、自分たちの都合のいいように移民を利用していることには、もう我慢できない。卑劣だ、と思う(Je trouve ça dégueulasse)」と発言したから大騒ぎ。 与党、民衆運動連合の代表で、常々、サルコジ大統領が左派系人材を内閣に採用することに反対してきたパトリック・ドヴェジャン氏は、「与党の代議士をなじるのはよくない!」と、待ってましたとばかりに反論。ドヴェジャン氏自身、バカンス前に中道派のカンパリーニ議員を「あばずれ女salope」と呼んで謝罪したことはどこ吹く風。民衆運動連合のスポークスマン、ナディーヌ・モラーヌ氏も「言動の自由とは言うけれど、最低限の礼儀は必要」と、暗黙のうちに、アマラ氏がフランスの礼儀を知らない移民出身であるからのごとく批判。また、社会党員でありながらサルコジ大統領の誘いに応じて内閣入りしたアマラ氏に不満を抱く社会党議員も、「内閣に入ったからには、自分の思想とずれる政策があっても黙るか、それができないなら辞任するしかない」と、冷たい態度。 アマラ氏の、右派も左派も自分たちの都合のいいように移民を利用する、という考え方には、多くの人が同意しているだけでなく、「dégueulasse」という彼女の怒りも、移民が家族呼び寄せのビザを申請する際に、DNA テストを導入するという政策に対してであって、少しも与党の代議士をなじっているわけではない。この〈dégueulasse〉劇、ゴダール監督の傑作『勝手にしやがれ』のラストを思い出してしまった。刑事に撃たれたベルモンドは、そんな自分のばからしい死も含めて、社会に向けて「C’est déguelasse !」と捨てぜりふ。それが聞き取れなかったジーン・セバークは、刑事に「なんて言ったの?」と聞き返す。それに対して刑事は「あなたは卑劣だ Vous êtes déguelasse !」と言ったんだよ、とすり替えてしまう。そのことをなぜか思い出してしまった。(真) |