陸上世界選手権をテレビ観戦していた時のこと。表彰台に上がるフランス代表選手たちの多くが、その肌の色からして明らかに伝統的フランス人でないのを見て、「旧植民地から選手を集めれば勝つのは当たり前さ」と、日本から遊びに来ていた友人は語った。
たしかに彼らは旧来の意味でのフランス人ではない。しかし、メダル獲得のために、かき集められ、試合直前に仏国籍を得た選手でもない。かつての移民の子孫である彼らは、ルーツの国より、ここ、フランスにアイデンティティーを見いだす世代であり、フランス社会に溶け込んだ市民である。
もちろん移民問題には厳しい面もあるが、彼ら二世、三世たちは、フランスという国の新しいアイデンティティーを創り上げつつあるのではないだろうか。フランスを生涯の地と決めた移民の子孫たちが、この国の奥行きを深める役をはたせるのは喜ばしいと思う。インタビューや表彰台で見る彼らの顔には、フランス人であることの誇りがうかがえる。
そして彼らをフランスの代表として、みんなが拍手をおくる。私はフランス人のこの新しいエスプリが好きだ。ナイーブなビジョンかもしれないが、そこに私は、人類の未来の明るい可能性の一つがあるように思えるのだ。
98年サッカーW杯に優勝した時、チームの多数が有色人種であることに対し、これはフランスチームではない、と極右のル・ペン氏は怒った。しかし私はル・ペン氏と同じ派には属さない。(坂本)