フィクションは現実をこえられるか? 《Windows on the World》

 「あれ」から2年。「その」事件を扱う小説で、これが最初でも最後でもないだろうが、本書は、小説だけで700書近くが出版されるという前代未聞の今年度の新刊シーズンにおいて、おそらく最も話題にされている。そのセンセーショナルな主題はもとより、その作家も癖のある人物であることもその話題性を増している。ベストセラーとなった前作『99francs』* で描かれているように、Beigbederはコピーライター。最も代表的なものはワンダーブラのキャッチコピー、「私の目を見て。目っていってるのよ」。文芸評論家でもあるが、昨年度まで司会をしていたParis Premiereの文学番組『Des livres et moi』では、出演者も観客も全裸だった。
 そんな彼の新作は、朝8時30分から10時29分まで分刻みに綴られる二つの語りからなる。「その」日、ワールドトレードセンターのレストランに二人の息子を連れて行くテキサス出身の不動産屋。「その」後、モンパルナスタワーに娘を連れて行くフランス人作家。「そこ」で何が起こったか、何人も知る由がない。「その」後の世界はどうであるか、誰が説明できようか。本書はこうした問いに答えようと努める。小説として。つまり、想像力とエクリチュールをもって、不可解で言語を絶する現実に挑むのだ。
 コピーライターでもある作家の才能がみられる短い文が多い本書、スノッブでBoBo(Bourgeois-Boheme)といってしまえばそれまで。「それ」について書いたことを批判してしまえばそれまで。この試みを試みとして評価してしまえばそれまで。しかし、本書は21世紀という現代に生きる読者にとって、現実が映る鏡、それを通して現実が見えるフィクションという窓になることはまちがいない。(樫)


*Frederic Beigbeder《Windows on the World》
Grasset, 2003, 378p., 18€

*邦訳:『¥999』、中村佳子訳(角川書店)

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9月17日17h30
Fnac Etoile:
26/30 av. des Ternes 17e (M。 Ternes)