戦後直後に生まれ、今日パピーブームといわれる、58歳台の定年退職も間近。統計によると、2006年が人口構成面で決定的時期にあたるそう。現在、フランスの労働力人口は約2700万人。その中で国家公務員(約230万人)だけでも毎年約6万人が定年退職していく。現在の労働力率を維持するには年間約100万人の移民が必要とされる今日、政府はいま手を打たねば時限爆弾を抱えているようなもの。フィヨン社会問題相は、前ジョスパン政権も取り組まなかった年金制度の中でも、公務員対象の、日本の共済年金にあたる「特別制度」の改革に挑戦する。 どの国にもある官民格差だが、民間給与所得者の老齢年金 (一般制度) の加入期間は、95年バラデュール政権時に37.5年から40年 (日本は25年) に延長されたが、公務員はそのまま。公務員の中でも電気・ガス・国鉄職員、軍人、警察官、看護士、教員などの加入期間は職種により15年か25年、定年年齢も50歳か55歳。また女性公務員は、子ども1人につき加入期間が1年(民間は2年)加算されるほか、3人持てば就労15年で満額を受給できる。基本年金額の算出法にも格差があり、フランスでの官民一元化は当分、夢話。 以下、改革案の主要項目を追ってみよう。 ●加入期間:公務員は2008年には40年に延長。平均寿命の延びに従い、官民とも2012年には41 年、2020年には42年に延長。 ●不足年数:民間は2008年までは年10%減額だが、その後は6 %に下げる。公務員は2008年からは年3%の減額制にし、60歳後(ただし加入40年以上)は官民とも3%増額。 ●基本年金額の算出法:公務員は現在、定年前6カ月の給与額に基づくが、2008年以降は定年前3年間の給与額を基準にする。民間就労者は従来通り40年間のうち25年間の高額給与額に基づく。 ●負担率:公務員の現在7.85%を今後、民間の10.35%並みに引き上げていく。 ●SMIC:就労40年の最低賃金所得者への給付率は給与(税込約940€)の現在83%から75%に。労組は給付率100%を要求。 ●在職年金:民間での在職年金制を緩和。 ●年金基金:官民とも税制面で便宜を計り積立方式を促進する。 ●60歳前の定年:14、15歳からの就労者には、60歳前の定年退職を認める。 フィヨン社会相の構想は、一言でいえば、官民とも60歳以降(現在平均57歳)も働いてくれ、人生の「2/3は就労、1/3は定年」ということ。1983年に定年年齢が65歳から60歳に引き下げられ、失業対策としても早期退職が奨励されたのだが、それとはまるで逆の方向に向かっている。 そして、CGT(労働総同盟)が指摘しているように、同改革案に従えば、1993年から2020年までの間に公務員の年金給付額は20%減り、民間就労者は30%も減る勘定になるわけである。 公務員の52%は加入期間の延長に賛成しているにしろ、若い世代も含め、定年後はたして暮らしていけるのかという不安が高まりつつある。老後の不安と最近の失業率の上昇が、全国で約30万人が参加したメーデーと5月13日のゼネストをかつてない深刻なものにしていたようだ。(君) |
03/20年金給付額の比較例 (手取り1400ロ) |