イラク戦争が激化。フランスでも、この戦争の経過が、毎日、テレビニュースのトップで扱われているが、1991年の湾岸戦争当時とは大きな違いが見られる。 湾岸戦争の時は、多国籍軍司令部から提供される空中撮影映像と、米国CNN局の映像だけが放映され、軍事目標だけをねらった「外科手術のように正確な爆撃」が強調され、イラク市民の犠牲者など、戦争の残酷さを伝える映像は完全にシャットアウト。ところが今回のイラク戦争では、米英軍の管轄下とはいえ、各国ジャーナリストがイラク内で取材活動を行っているし、欧州の主要なテレビ局や通信社のジャーナリストたちはバグダッドに残り、毎日中継で現地報告を行っている。イラク国営テレビやカタール国の衛星TV局アルジャジーラによる映像も流される。また1991年の偏った報道を反省してか、フランスの各テレビ局は、ニュースソースをはっきりさせることに神経を使っている。 しかし、米英およびイラクの双方がメディアを有益な武器として利用する姿勢はあからさまだ。戦争4日目にアルジャジーラ局は、イラク国営テレビから提供されたという、米兵捕虜数人に対するインタビューの映像を流した。世論や軍隊の士気への影響を怖れた米国の国防長官は「(捕虜の扱いを決めた)ジュネーブ条約に違反」と直ちに強く抗議し、放映を控えるように指示。しかし、その前日には、次々に降伏するイラク兵の姿が、世界各国のテレビに、なんの遠慮もなしに流されている。 この戦争の一番の被害者は、イラクの市民たち。4月4日現在で700人以上が爆撃などで死亡。バグダッド攻防戦では、これをはるかに上回る死者が出るだろう。この過酷な事実をどこまで報道できるのか、ジャーナリズムの姿勢がふたたび強く問われることになるだろう。 …とここまで書いてきたところ、4月8日、イラク時間で午前11時59分、バグダッド市内にある、各国ジャーナリストが取材活動のベースとして使っているホテル・パレスティーヌに向けて、米軍のタンクが発砲。ウクライナとスペインのカメラマンが死亡し、2人が重傷を負った。米軍は、ホテルから銃撃を受けたための反撃と釈明。ところが、死亡したカメラマンのすぐ近くで取材していたFrance 3のジャーナリストは「ホテルからの銃撃はなく、タンクは意図的にホテルを狙ったもの」と証言している。同日、米軍は、バグダッド市内にあるアルジャジーラ局の事務所もミサイルで爆撃し、ジャーナリスト一人が死亡。バグダッド攻防戦の実体を報道しようとするジャーナリストたちを排除するための、米軍の作戦だったのだろうか? スペインとポルトガルは、自国のジャーナリストたちに向けて、バグダッドを即座に離れるように勧告した。(真) |