●Orchestra Baobab(World Circuit) 70年代に、セネガルのダンスバンドとして圧倒的な人気を誇ったバオバブ・オーケストラ、彼らがリバイバルしてのこれが2枚目だ。キューバ音楽を思わせるリズムも残っているが、ギターの、それこそ演歌を思わせるような切ない泣き方、各種打楽器によるリズムの独特な絡み方はセネガルならではのもの。そしてこの声! ンディウガ・ディエンが歌うバラード “Dee Moo Woor” を聴いてほしい。ユッスーやマールに比べれば軽いけれど、その底にはしぶといコブシがあり、目頭がジーンとなってくる。最近低迷気味のアフリカンポップスに活を入れてくれる傑作だ。 ●Red Hot+Riot(MCA) ソウルやフリージャズの影響を受けながら独自のアフリカンビートを生み出し、アフリカのダンス音楽を変革した巨人、フェラ・アニクラポ・クティが亡くなったのは1997年。彼の名曲に、ダンジェロ、ケリス、シェック・ロー、ババ・マール、タジ・マハールなどが挑戦したアルバムだ。フェラのかつてのホーン陣が強烈なリフを繰り返す中、それぞれが、単なるコピーではない想像力を駆使したプレイを聴かせてくれる。傑作は、ダンジェロがアレンジして歌い、メイシー・グレーもバックで歌う “Water not get enemy”。(真) |
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●Vincent Delerm(tot ou tard) 今、仏シャンソン界で最も注目されている自作自演歌手のヴァンサン・ドレルムは、左岸歌手のスタイルを継承する新感覚派。声はゲンズブールとアルチュール・Hの中間で、シャイな感じのする表情は若い頃のトリュフォー監督そっくりだ。軽やかなリズムで歌われる “Fanny Ardant et moi” は、トリュフォーに欠かせない存在だった女優アルダンと夢の中でデート。”Chatenay Malabry” は佳曲。”Tes Parents” では左翼プチ・ブルジョワの生活をシニカルに歌い、ルルーシュの『男と女』からヒントを得た “Deauville sans Trintignant” はノスタルジック。人々の様々な表情を詩に歌い上げ、映画のシーンを観るようなこのアルバムは、今秋大ヒットした。(南) |
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