バカンスにまつわる気になるお話を一つ。ラフは仕事の都合で妻と同時にバカンスがとれませんでした。妻のモモは以前からアフリカへ行きたがっていました。モモの友人カップルがアフリカへ旅行することになり、ラフは妻の希望をかなえてやりたいと、彼らとの同行を強くモモに勧めました。長い間モモはためらっていましたが、結局出発しました。
一週間後、ラフはモモから愛情のこもった絵ハガキを受け取り、妻が楽しく旅行しているので大喜びでした。二週間目、一度電話がきましたが不自然に通話が切れました。アフリカ、しかも田舎を旅行中なのだから電話もうまく通じないのだろうと思いました。それから一週間後、モモが帰国しました。駅に迎えに出た夫に彼女は多くを語ろうとしません。ラフはヘンだと思いました。
翌週、留守電に見知らぬ男からモモ宛にメッセージがあるのをラフがみつけました。疑いは確信に変わりました。ラフは妻に、アフリカで男ができたのかと聞きました。そうでした。モモはガイドと激しい恋におちてしまったのでした。
モモは当分家庭内離婚という形を思っていたようですが、夫はすぐに家から出ていってほしいと言い渡しました。離婚の準備が始まりました。二人が共同で買った家の処分は簡単にはいきません。それぞれに利害の計算があって、別れると決まったら、相手には一文たりとも多くは与えたくないようです。十年来の私の友だちは敵同士になってしまいました。
ラフは簡素な独身者になって再出発、モモのアヴァンチュールは始まったばかりです。(baudet du poitou)