最新映画情報 N° 423 1998-10-01 ● Sue perdue a Manhattan マンハッタンに独り住まいのスーは、静脈が透けて見えそうな白い肌、さまよう視線、なにかをいいたげな厚い唇、どこか危うい美しさを持っている。40歳くらいだろうか。失業中で部屋代もたまり大家からの催促が厳しい。そんな彼女に惹かれる男たちはあとを絶たず、スーも行きずりのセックスに燃え上がる。でも、それだけ…。すぐそこに孤独からの出口がありそうだが、スーの救いを求めるかすかな仕草や言葉に、男たちは気づかない。そんな彼女の表情のディテールを丹念に重ねながら、アモス・コレック監督は、バーバラ・ローデン (カザンの妻で女優だった)の « Wanda » やカサベテスの « Woman under the influences » 以来の、胸に食い入るような女の肖像を創り出した。アルツハイマー病の母に電話するシーンが、見ていてツライ。 (真) ● La Vie revee des anges 主演女優のひとりエロディー・ブーシェーズは、A・テシネの『野生の葦』以来注目し続けてきた女優で、いつも逆境にめげずたくましく生きる、芯の強い若い女性像を見事に演じるが、今回は少し抑えめに、もうひとりの主演女優ナターシャ・レニエの対極を演じきった(今年のカンヌでは二人揃って主演女優賞)。 浮浪者のような生活をするイザ(ブーシェーズ)と縫製工場で働くマリー(レニエ)の出会いから、二人の友情にひびを入れる金持ちの息子(グレゴワール・コランが完璧)の出現、マリーの失恋とその後の悲劇まで、現代の、しかも現実的な社会問題に触れているのに、なぜか戦前のメロドラマを見ているような錯覚におちいってしまう。身分の違いが不幸のはじまり、という古臭くてどこまでも悲観的な考え方が、俳優たちの素晴らしい演技の邪魔をしている気がしてならない。 (海) ●サッカーの夏が終わり... って感じで、作家映画の秋が始まる。先月23日に公開されたロメールの新作、十年がかりの四季物語の完結編「Conte d’automne」は、ローヌ地方で葡萄栽培を営む未亡人の夫探しを語る。季節を映画で語れる彼、その語りは19世紀ロマン的でもある。場所もジャンルも変わり、先月中旬に公開されたハル・ハートレーの「Henry Folle」は、NYのロックスターな(?)詩人の誕生を描く。ラストシーンの疾走はカラックスの「汚れた血」を思わせ、泣いてしまう。また、いよいよ映画に転向か(!)の « 本当の » NY作家ポール・オースターの「Lulu On The Bridge」(7日公開)は « 賢者の石 »をめぐる愛とサスペンス。これに、ドパルデュー Jr が覆面作家の役で主演する、未公開のカラックスの待望の新作「Pola X」が加われば言うことなしだよね… 。 (岳) Share on : Recommandé:おすすめ記事 2026年 カンヌ映画祭だより ② クリスチャン・ムンジウ監督が2度目の最高賞、岡本多緒が日本人初の女優賞に。 2026年 カンヌ映画祭だより ①深田晃司監督『ナギダイアリー』会見 - 避けては通れないA I問題 【シネマ】亡き父への屈折したオマージュ『Sukkwan Island』 【シネマ】ロヒンギャの存在を可視化『Les Fleurs dumanguier(マンゴーの花)』藤元明緒監督インタビュー。 【cinéma】『La Fille du Konbini / 朝がくるとむなしくなる』 第79回カンヌ映画祭は日本勢に存在感。