● LES IDIOTS ”BREAKING THE WAVES” に続く、デンマークの鬼才 Lars Von Trier の新作だ。正午過ぎのレストランで、ひとりで食事をとる闘病中の若い女性と、誕生日を祝う若い男女グループが出会う。ただ、この若いグループの半数は精神薄弱者で、レストランの客たちの団らんを邪魔している。ところが彼らが帰途につくとき、彼らの行動がすべて「つくりもの」だったことに気付かされる。そう、彼らは「白痴」になることを追求する集団だ。
知性を無視にし、白痴状態に入り込むことで自己を追求する彼らの毎日は、悪くいえば「新興宗教」の姿にもとられ、同時に「白痴」という状態の中で外部から自身を保護するという「逃げ」の姿勢があることも、ひとりひとりからはっきりと見て取れる。また一般人の抱いている、精神的ハンディを背負った人々への恐怖感、嫌悪感または差別が辛辣に批判されてもいる。偶然な出会いから彼らと生活を共にする若い女性の変化— 表面的には彼らを冷静に観察しているようで実は誰よりも深く自己の内面を分解し、本物の「白痴」になる瞬間を迎える— と共にこの作品は完結し、後にずしりと重い感動と疲れを残してくれる。 (海)
● SEXE ET TABOUS
「労働者」や「記憶」など、テーマを組んで映画をビデオ上映するビデオテーク。今回のテーマは「セックスとタブー」。精液の匂いが劇場内にまで漂ってきそうな「愛のコリーダ」から、若き日のブルック・シールズが艶めかしい「プリティー・ベービー」、はたまた70年代の超カルトムービーの「スウィート・ムービー」(カリビアン・リズムで小刻みに踊るオバチャマが痛快)まで、あらゆるエロチシズムとタブーが集まった。エッチな映画が大好きな人も、「セックス、まっハレンチな!」なんて言ってる人も、それぞれの性をかえりみることができる。(章)
* Forum des Halles 01.4476.6200