RAGOUT D’AGNEAU
キリスト教ではイエスを、人間の罪をあがなうために神に捧げる子羊にたとえる。復活祭の子羊 agneau pascal という表現があるくらいで、フランス人は、自分の罪を反省しながらかどうかは知らないが、この祭日前後に子羊を食べることが多い。春の子羊は、薔薇色の身に白い脂が混じり、それほど羊っぽくない柔らかな味が特徴だ。今回は、さまざまな春野菜といっしょに煮込むシチューを復習。レストランでも人気が集中する一品です。
1キロ半ほどの肩肉をひとつ買ってブツ切りにしてもらう。調理前に、余分な脂を取り除き食べやすい大きさに切り分ける。厚鍋 (鋳物製の cocotte が適している) に油を多めにとり、熱くなったら肉を加えて炒める。焼き色がついてきたら、あとでトロミがつくように小麦粉大サジ2杯を振りかける。鍋の底に粉がこびりついても気にせずにしばらく炒め、押しつぶしたニンニク2片を加え、いい香りがしてきたら、ヒタヒタになるように水を注ぐ。ここで濃縮トマト大サジ2杯と、セロリも入ったブーケ・ガルニを加え、塩、コショウ。沸騰してきたらフタをし、弱火で45分間煮込みます。
この間に野菜の準備。ニンジン2本、カブ3、4個は皮をむいて切り分け、小さな新玉ネギ oignon blanc 10個 は、ひと皮むいておく。以上をバターで炒めるのだが、砂糖を少々加えると、でき上がりに燻したような風味がついてグンとうまくなる。全体に軽く色がついてきたら肉の鍋に加えることにしよう。
さらに30分たったら、皮をむいてひと口大に切った新ジャガ800グラム (羊肉と相性がいいので多め) を加え、これが煮上がったらでき上がり。表面に浮いた脂を除き、パセリを散らしたい。これで6人分。ワインは、シノンなどロワール産の上品な赤かな。 (実)
材料 : 子羊の肩肉 1.5kg、ニンジン 2本、カブ 4個、新玉ネギ小 10個、ジャガイモ 800g、ニンニク、ブーケ・ガルニ、濃縮トマト、小麦粉、油、塩、コショウ
● 子羊 agneau の肉
1) くび肉 collet (collier) : 煮込み用。
2) ロース côtes : グリルやソテーにする。
3) ヒレ filet : 炭焼きにするなら最高。
4) 肩肉 épaule : 下記参照。
5) ばら肉 poitrine : 脂っこい煮込みに。
6) もも肉 gigot : ローストあるいは薄く切ってステーキに。
7) セル (上もも肉) selle : グリル、ソテー、串焼き用 。
● 子羊の肩肉 épaule d’agneau
適当に脂が混じり上品な風味。モモ肉より安く、キロ40~60フラン。アラブの肉屋さんで売られているアイルランド産はさらに安い。真ん中に palette という肩甲骨が入っているので、買うときに肉屋さんに取り除いてもらう。煮込みやシチューだけでなく、小さな角切りにしてからタイムやローズマリーなどのハーブを振りかけて串焼きにしてもおいしい。おろしニンニクをすりこんで塩、コショウし、丸ごとローストするのも素晴らしい。
● 新玉ネギ oignon blanc
頭のところだけを炒めてから、子羊やトリの煮込みなどに加えたい。緑の葉はサッとゆでてヌタにするのが最高。全体を細かく刻んでサラダに入れたり薬味にしたり、あるいは細く切って豚肉と炒め合わせるのもうまい。
● ブーケ・ガルニ bouquet garni
タイムひと枝、ローリエの葉1、2枚、パセリ数本というのが基本。あとで取り出しやすいように糸で結わえます。料理によってはパセリの茎も1本加える。
● singer
肉などの材料を炒めた後、小麦粉を振りかけること。さらに炒めて、ワインや水などの液体を加えて煮込むと、トロミがつきます。