スイスの文化遺産「ハイジ」は、女流作家ヨハンナ・シュピリの児童文学。シャーリー・テンプルの主演映画や、宮崎駿と高畑勲が手がけた、あまりに有名な 「アルプルの少女ハイジ」など、国境を越え多くのアダプテーション作品を生み出した。今回はスイス人アラン・グスポーナー監督が、自国の俳優と言語にこだわり、実写版ハイジを21世紀に蘇らせてみせる。
標高2千メートルの山小屋。叔母に手を引かれ、面識のない粗野な祖父の元に置き去りにされるハイジ。冒頭から私たちはそんな少女の不安に寄り添う。祖父と心を通わせ、大自然の懐で伸び伸び過ごし始めたかと思いきや、今度は一転、都会のお屋敷生活へ。終始大人の都合に翻弄されっぱなしのヒロインだが、いつも小さな胸に去来するのは、美しいアルプスの山々だ。
“戻るべき場所に戻る少女の物語”という意味では、高畑勲の 「かぐや姫の物語」にも通じる。生きる力みなぎる自然体のハイジを、応援せずにはいられなくなるだろう。祖父役はブルーノ・ガンツ。「ベルリン天使の歌」 の名優も白い髭をふんだんにたくわえ、どこから見ても「アルムおんじ」。思わず 「教えて~おじいさん~♪」と歌いたくなる。冬のバカンスに駆けつけたい良質のファミリー映画だ。2月10日公開。(瑞)