トビラ法相は昨年5月の奴隷制度廃止の記念式典で国歌を歌わず、政界でバッシングにあった。人種差別的だとして拒否したのである。しかし、フランスには国歌斉唱を拒否するのではなく、別な歌に変えてはどうかと問いかける人たちもいる。
モンペリエに住む手回しオルガン奏者で歌手の、ジル・アンドレさんとジュリー・ラ・ルッスさんは、「世界に誇る自分たちの国の歌の歌詞は、平和なものがいい」と、6月の半ばから国歌を変えるために署名運動をはじめた。『ラ・マルセイエーズ』の代わりに彼らが国歌として奨めるのが、ジャン・フェラの『Ma France』だ。その歌詞にはフランスの地名や偉人たちの名前、そして名詩や名句へのオマージュのような表現が散りばめられている。軍歌だった『ラ・マルセイエーズ』にはない、優しさが満ちている。ネットで行われている署名活動に今後どれくらいの人が名前を連ねることになるのかは分からない。大多数は真面目に受け取ることもないだろうし、急に国歌が変わるということもないだろう。しかし「歌は世につれ、世は歌につれ」の言ではないが、こうして国歌を生き物とみなし、自分たちで刷新していこうという動きにこそ積極的な「愛」があるように思う。
また革命記念日が近づいている。今年は1月から何かと物騒な事件が続いた。そのたびに政治家たちは「共和国の精神」という大所高所のお題目を鼓舞してきた。正直なところマッチョな「愛国心」に少しばかり食傷気味なこの夏、ジルさんとジュリーさんの歌う、ほのぼのとした国歌を聞きに行くのもいいかもしれない (浩)
ジルさんとジュリーさんの署名サイト
www.mesopinions.com/petition/politique/remplacer-hymne-national/14568