不要なものを捨てずにネットで転売するということが、今や一種の生活の知恵として確立されつつある。同時に、自分の処女を競売にかけて高額な落札金を手にする女性が現れたり、闇で臓器が売買されるといったことが問題視されている。4月11日のル・パリジャン紙も、19区のエミール・ボレルト小学校の教師らが学校の教室をショッピングサイトで売りに出したと報じた。しかし、金ほしさの犯行というわけではないらしい。
地方の過疎化と大都市のドーナツ化現象が進む日本では、寒村と都心の両方で公立学校の統合や廃校が相次いでいる。フランスでも事情は似たようなものらしい。パリ大学区によると、来年度は児童の数が1500名も減少するという。その影響からか、エミール・ボレルト小学校でも9月から学級がひとつ削られることになった。しかし、その余波として、ひとクラス20人から25人になり、複数の学年を同時に教えるなど負担が増えることになるため、教師たちはこの措置に反対し、実力行使に走ったのだ。
学級数の削減に反対して教室がネットで売りに出されたのは、実は今回がはじめてのケースではない。 14年の6月にもディジョンの幼稚園の父兄たちが同じ行為に出ている。
実際に買い手がつくことはないが、これが民間企業であれば、とんだ買収騒動につながっただろう。教師らも、自分たちで株を買い占めて経営の実権を握る、エンプロイーバイアウトという手を使っていたかもしれない。だが、公立学校は企業ではない。企業に「虎の子」を託している株主たちは株を高値で売り逃げればいいが、学校に「人の子」を預けている親たちは、そうもいかない。(浩)