9月6日、黄色い安全チョッキをまとった大人や子供たちがパレ・ロワイヤルの広場に集結、気炎をあげながら土曜のパリの町を行進した。とはいえ、交通安全週間のパレードではない。あらたに施行された公立学校の通学日の増加に反対しているのだ。
受験地獄を味わっている日本の子供たちにはうらやましい話だが、これまでフランスの学校では、ご存知のとおり、土日に加えて水曜日を休校とする、週休3日制が採用されていた。それが9月からの新学年からは、水曜日の休校日をやめ、金曜日の午後は課外活動に向けるという週休2.5日制がとられることになった。この改革は危惧されてきた児童の学力の低下に対する打開策として打ち出されたものだが、すでに昨年はじめに政令が決定された時点で、抗議の声が沸き起こった。
『ル・モンド』紙のインタビューに答えた〈黄色いチョッキ〉発起人の一人で、教師のセリーヌ・ファーブルさんたちも、「子供たちを守れ!」と、昨年2月にフェイスブックにページを開設。現在では6万人が登録しているという。
こうした反対運動が起こる背景には、国が政令を強行する一方で、日中保護者が家庭にいない児童のための「学童保育」や「補習クラス」といった市町村のサポート準備が遅れているからである。
「児童が私立の学校に流れていくかもしれない」、「補習の時間が民間企業に委ねられてしまうのでは」といった心配もある。
〈黄色いチョッキ〉運動は当初から〈非政治・非組合〉の立場を貫いているが、ファーブルさんたちの声を、現政権を批判する自分たちの追い風とする野党や組合もいることはたしかだ。
マルセイユでは5日、800人近い父兄と約400人の児童のデモ隊から、「ゴーダンGaudinはケチRadin」などと市政の対応の遅れを非難されたゴーダン市長(UMP)は、逆に子供がデモに参加させられている光景に顔をしかめ、国のあきれた政策決定の責任をなすり付けられてはたまったものではない、と苦言を呈している。
『Aujourd’hui en France』による世論調査では、62%の人がこの通学日数改変を「どちらかというと否定的に見ている」と回答。就任早々に教師や父兄、生徒の多くを敵に回すという試練を強いられたベルカセム教育相。楽しい夏休みが終わり、頭を抱えているのは、どうやら勉強ができない落ちこぼれの子供たちだけではなさそうだ。(康)