『Le Conte de la princesse Kaguya』
竹取の翁がいつもの竹やぶで光る竹を発見、中には可愛い赤子が!家に連れ帰って妻と大切に育てると、みるみるうちに、それはそれは美しい娘に成長した……。日本人なら誰でも知ってる『竹取物語』を日本アニメの巨頭、高畑勲が監督した『かぐや姫の物語』がいよいよフランスでも公開さ れた。日本でのキャッチコピーは「姫の犯した罪と罰」。
月世界人である彼女は、何らかの罪を犯して野蛮な地球に流刑されたのだ。刑期が終わって月世界から迎えが来ると「帰りたくない」と “かぐや姫”は涙する。分かったような分からないような不可思議さを残したまま物語は5百年も前から継承されてきた。
高畑版 “かぐや姫” に新解釈があるわけではなく原本に忠実に物語が展開する。その中で観客がそれぞれ自由な解釈を楽しめる。竹から(月から)授かった金で翁は娘を相応しい身分にすべく田舎を捨て都に豪邸を建て引っ越す。ここで何か間違っていると思ったのは私だけ?やがて姿をいっさい見せないまま噂が噂を呼んで”かぐや姫”は大ブレイク、高貴で好奇な殿方たち、最後には帝にも言い寄られるが、全員見事に袖にする。そんな潔い姫に共鳴の拍手を送 りたくなったのは私だけ?かぐや姫が地球を愛してしまった理由は、近所のガキたちや捨丸にいちゃんと田舎の野原を思う存分駆け回った幼女期の自由闊達、翁(おきな)や媼(おうな)の愛情、愚かし くも愛らしい地球人(人間)ゆえか。
どうも月世界は極楽浄土のようだ。すべてが円滑なかわりに喜怒哀楽、感情というものが存在しないのだ。冷たい月の光ように。ダメだらけでも地球の方が良いと “かぐや” に感情移入して落涙したのは私だけ?
3Dアニメ全盛の折に、水墨画タッチのアニメの美しさがまた素晴らしいのです。(吉)