フランス生活、パリ生活になじめない日本人が多い。「フランス人は自己中心的」、「謝らない」、「仕事熱心でない」とぐちが絶えない。一理あるけれど、そんなにいつも肩を怒らしていては疲れるだろうな、パリ生活だって楽しいのになあ、とボクは同情するのだが、そんな人にはこの一冊を推薦したい。
著者は、60以上の小さな物語で、フランス人、パリっ子の生活の隅々まで入り込んで観察する。彼らとの付き合いで、いろいろ楽しんだり、失望したり、時には悲しくなったりする自分にも、うまく距離を置いているので、その批判にも思いやりと共感があり、彼らと上手につき合っていく身振り、心振りを学べる。『カフェでの時間』のところで、著者は書いている。「この街では、皆、どこか芝居がかっている。そして、人が人らしい」(真)
著者のアトランさやかさんはオヴニーで『デュマ、食の物語』連載中。
大和書房刊。600円+税。