今月は「めっけもの」59分の短編『Un monde sans femmes 女気なしの世界』を紹介します。なんといってもエリック・ロメールやジャック・ロジエの映画が大好きな人には絶対おすすめ! あのえも言われぬおかしさと切なさがよみがります。
舞台は夏の終わりの海辺。女性二人連れ(実は母娘)がオーシャンヴューの小さなアパルトマンをレンタル。鍵を渡しに来たのは、ちょっとさえないけど誠実そうな小太りで生え際が後退している30過ぎの男、シルヴァン。パトリシア(母)はバカンスなのだからとハメを外したい。ジュリエット(娘)は大人しく控えめにそんな母親を見ている。こんな時、お人好しのシルヴァンは何かと便利(?)で、ボディーガードになったり遊びの相手をしてくれる。日頃は女気なしで独り暮らしのシルヴァンも悪い気はしない。そしてシルヴァンはパトリシアに惹かれるが彼女の方はそんな彼の気持ちを知ってか知らずか気にとめない。ジュリエットはそんな母を好ましく思わない…。気持ちを表現するのって難しい。誰にも共通する人生のこの難題をオフビートで描いた逸品。
監督はギヨーム・ブラック。そしてシルヴァン役のヴァンサン・マケーニュがケッサク。この二人はこれから目が離せない。映画館で併映されている同監督の『Le Naufrage 遭難者』(24分)でもヴァンサン・マケーニュはシルヴァンという役名の男を演じている。この作品もかなりいけてる。週末パリから自転車でピカルディーまでやって来た男がパンクで立ち往生。通りかかったシルヴァンをうざい奴と敬遠したが男は結局彼の世話になる。しかしシルヴァンはお節介を焼きすぎ…。
2月8日に小規模公開された二作ですが口コミで盛り上がってます。24日に発表になるセザール賞短編部門にノミネート。賞を獲得したらロングランになりそうだ。お見逃しなく! (吉)