12月31日にサルコジ大統領が打ち出して以来、「TVAソシアル」の議論がかまびすしい。TVAソシアルとは、雇用者や被雇用者が給与に対して払う社会保障の負担金(医療保険の保険料や家族手当の掛金)の率を引き下げ、その代わりに消費税TVAの率を引き上げ(案では19.6%から23%に)、その引き上げ分を減少した社会保障の財源に回すというものだ。人件費が安くなる分、製品・サービスの価格を下げる。フランス国内で生産される製品価格が下がる一方、輸入製品はTVA率上昇で価格が上昇するので、フランス製品の競争力が高まり、工場などの外国移転を阻止して雇用を維持できるというのがこの施策の青写真であるらしい。
ところが、実際には社会保障負担減が製品価格引下げに反映されるとは限らないし、TVA上昇による物価高は庶民を直撃する。与党は大統領選挙前にこの措置を法制化する意気込みだが、上院多数派の野党は反対しているので、先行きは不透明だ。世論調査で国民の64%が反対しているように、国産品が安くなる期待より、TVA上昇による物価高の心配のほうが大きい。(し)