「食欲の秋」に相当する言葉がフランスにあるのかどうか知らないが、食べ盛りの男の子2人を抱えたわが家では、毎日の食事は重要課題だ。ボリュームと栄養のバランスを考えつつ、手間と財布の具合を考慮しながら毎日、献立に頭を悩ましている。子供の嫌いな野菜や魚を食卓に出し続けていたせいか、二人とも好き嫌いのない子に育ったのはうれしいが、食事にはこだわりがあるようで、夕方になると、「晩ごはん、なに?」と必ず聞いてくるし、注文も出す。
そのため、夕食時には学校の給食のことがしばしば話題に上る。「まずくてほとんど食べなかった」とか、「魚のフライだったけど、ぜんぜん魚の味がしなかった」、「すごくまずいインゲンだったから、缶詰にちがいない」と否定的な意見が多い。給食のメニューを読むとおいしそうに思えるのだが、次男が小学校のとき食堂を見学させてくれたが、ソースのかかった魚を味見してまずがったのを覚えている。日本の学校で体験した「日本の給食のほうが1000倍おいしい!」という。
教育省や農業省は食育や栄養バランスに力を入れているそうで、去年からはフライドポテトは週1回までになったし、つい最近もバランスの取れたバラエティーに富んだ給食を用意すべしという農業省政令が出たそうだ。ただし、栄養バランスがとれた食事と「おいしい」食事はイコールではない。
パリ市のウェブサイトによると、パリの学校の50%は校内で給食が作られていて、残りの半分は給食センターで作られて各学校に運んで供されるという。おそらく、いい料理人が学校内で作っている場合はより良質の食事が出されるのだろう。要するに学校によるということだ。
給食費は次男の中学では年間約400ユーロ。これを換算すると長期休暇のない月で47ユーロくらい、つまり1食3ユーロ前後になる。長男の高校では1食4ユーロだ。「まずい」と言われると、給食費がひどく高く思われてくる。(し)