19年前、図書館ですれ違う、赤毛の女学生に片思いしたのがはじまり。「長い間、遠くから見つめるだけだったよ」とセバスチャンさん。一方、ノエミさんはこう返す。「もちろん彼の視線には気づいていたけど、当時はすごくキツイ性格だったのよ」。数カ月後、彼からはじめての誘いには釘をさした。「お茶を飲むだけならいいけど、ベッドで終わると思ったら大間違いよ!」彼にとっては、その発言が気に入った。大概の場合において、反対の結果をうむというのが彼の持論。その後、半年の付き合いを経て、彼女はあっけなくサヨナラを告げた。だが、同じ大学で経営学を学ぶ二人は、否が応でも顔を合わせるはめに。「もしかして早まったかも。まだやることがあったかもしれない」という疑問がわいて、別れて二年後、付き合いを再開。一見、ノエミさん主導の関係に見えるが、だんだん二人の間に変化が表れてきた。「昔はあんな攻撃的で不安症だった私の性格が、彼のおかげで丸くなったの。肩の力を抜いて生きる術を学んでいったわ」
今では彼らの息子も10歳になる。シネマテークの人事課に勤めるノエミさんと、エコノミストとして活躍するセバスチャンさん。共通点はカフェが好きなところ。「コーヒーを飲むのも新聞を読むのも休憩もカフェで。休日は2?3軒をはしごするのが好き」と彼女が言えば、彼はこう定義づける。「僕にとって最高のぜいたくとは、席につくと、注文する前にタルティーヌと上客にだけサービスされるジャムが出てくることだよ」。こう言いながら、粉末のインスタントコーヒーを並々と注いでくれた。
うまくいくコツは一にも二にもオーガニゼーションだと声を揃える。四六時中一緒にいないこと、互いのテリトリーに足を踏み入れないよう注意している。また料理は彼、買い物は彼女担当、洗濯は別々という徹底ぶり。なぜそこまで個人主義を貫くの? という質問には冗談交じりに答えた。「もう洗濯機からピンク色に変色したシャツを取りだすのはコリゴリだからね」(咲)
前回のバカンスは?
「この夏、シシリア島のパレルモで過ごした一週間。町は汚くてガッカリしたけど、列車で海岸巡りをしたよ」(セ)
夢のバカンスは?
「美しい風景の中、美術館とカフェのある町へ。海が近ければ最高ね。理想はトスカーナよ」 (ノ)
「8月誰もいなくなったパリで羽をのばす。美醜の共存こそがパリの魅力。僕はピガール界隈の大ファンだよ」 (セ)
最近、二人で見た映画は?
「『メランコリア』を見て、残る人生エンジョイしなきゃと思ったわ」(ノ)
お気に入りのレストランは?
Le Voltigeur (45 rue Francs Bourgeois 4e 01.4276.9706)
「おいしくはないけど、サービスが最高。私たちにとって理想的な店よ」(ノ)
カップルとしての満足度を5つ星でいうと?
★★★★「彼女はパーフェクトじゃないけれど、長所がいっぱいある」(セ)
★★★★「彼と一緒にいられるだけでうれしいわ」(ノ)
図書館の片思い時代、セバスチャンさんは まだ知らない彼女に思いを馳せ、 デュピュイ&ベルベリアンの絵本 『Le Chat Bleu』を、繰り返し眺めた。 パリジェンヌの日常のシーンが 詩的に描かれている。