2008年のヨーロッパ調査機関の調べで、フランスの高速道路がヨーロッパで一番安全と評価された。これはフランス人でも知っている人は意外と少なく、友人たちも「ヨーロッパのナンバーワンはドイツじゃないの? 信じられない」と、異口同音に驚いていた。さらに詳しく調べていくと、フランスは10年間で交通事故による死亡事故数を半分に激減させたことがわかった。これほどの成果をあげたのはヨーロッパでもフランスただ一国のみで、他国は数十パーセント減程度に留まる。成功の理由は、国を挙げた事故削減努力の成果といえるだろう。
しかし順調なばかりではない。今年3月には今まで着実に低下していた死亡事故数が一転、20%増になってしまったのだ。その対策として、政府は速度取り締まり用レーダー予告パネルの撤去を始めた、ということは以前に書いた。この対策に反対の声が高まり、追い込まれた政府の「次の一手」は何かと私はひそかに楽しみにしていたのだが・・・見事に期待に応える面白い対策を打ってくれた。速度を抑制するためのユニークなパネルを、全国次々に設置したのだ。
この看板が実にお茶目で可愛い。まずそのパネルに車が近づくと、その車自身の通過速度が表示され、法定速度以下だと「ニコチャンマーク」がニッコリと微笑みかける。一方、法定速度を超えると、しかめっ面をするのだ。またこのパネルには、法定速度を超えると罰則金額とペナルティー点数が表示されニコチャンマークも連動するという、過激なバージョンも存在する。実際には罰則を受けることはないが、運転する人が受けるインパクトは強烈だ。政府の打ち出した、速度抑制パネル作戦。今のところ成果は着々と上がっている模様だ。このパネル、実にユニークで効果的なため、全世界に広がっていくのではと、私はちょっと心待ちにしている。(和)