ちょっと肉感的なところがブリジッド・バルドー、陰のある笑顔がアンナ・カリーナを彷彿させるレア・セイドゥ。1985年7月1日生まれで、祖父がパテ、大叔父がゴーモン代表という映画界の箱入り娘。だが人権活動家でしっかり者の母のもと、「管理人の子供より贅沢せず育てられた」という。20歳の頃に青春コメディ『Mes Copines』で映画デビュー。端役とモデル業をこなした後、08年のクリストフ・オノレ作品『美しいひと』の主演に抜擢される。高校教師を翻弄する危うげなヒロインを、ヌーヴェル・ヴァーグの空気感をまとって好演。20代でもティーンの役を自然にこなせるロリータフェイスは、後に映画『Belle Epine』でも生かされた。そこはかとないアンニュイ感はオノレやベルトラン・ボネロら新世代の仏人映画作家に重宝される一方、外国人の巨匠もしっかり目をつける。ラウル・ルイズは『Mystères de Lisbonne』、ウディ・アレンは『Minuit à Paris』で端役でも忘れ難い運命の女役を彼女に捧げた。リドリー・スコット、クエンティン・タランティーノ作品に次いで、近々『Mission : Impossible』に出演と、ハリウッドでも常連になりつつある。「好きな女優はケイト・ブランシェット」と言うが、ケイトのように器用でないのが彼女の魅力かも。(瑞)