2007年5月、サルコジ大統領が誕生すると同時に大統領府官房長官に就任したクロード・ゲアン(66)は、大統領に権力が集中し彼が思いのままに政治が行えるように尽力した。今年2月の内閣改造では、その労を報われて内務相の要職に。今度は、2012年大統領選挙でサルコジ大統領が再選されるための舵(かじ)をとる。サルコジ大統領が立候補した場合、彼の決選投票進出への道をふさぎそうなのが極右の国民戦線党候補者マリーヌ・ルペン。ゲアン内務相の、ルペン支持者をサルコジ支持者に転向させる手っ取り早い作戦は、国民戦線党得意の移民排斥主義、反イスラーム主義に歩調を合わせることらしい。
そこで、ゲアン内務相は国民戦線党を思わせるような強硬な発言を繰り返す。「フランス人はコントロール不可能な移民のせいで、時々自分の国にいないような気持ちを抱いている」(3月17日)。「(リビアへの軍事介入に関し)サルコジ大統領は、国連安全保障理事会を動員するために十字軍の旗頭を務めた」(3月21日)。「(政教分離の原則が定められた)1905年当時、フランスにはごくわずかのイスラーム教徒しかいなかったのだが、現在は500万から600万人の教徒がいる。この教徒数の増加と彼らのある種の態度が問題となっているのだ。イスラーム教徒の、通りでの祈りが、フランスのかなりの数の市民たちにとってショックだというのは明らかなことだ」(4月4日)。
ゲアン内務相は、5月22日ラジオでのインタビューで「学校教育でいかなるディプロムも得ることができなかった児童たちの2/3は移民の児童たちである」と発言。25日には国民議会で、少し内容を変えながらも「移民の児童たちの2/3は、ディプロムなしで学校教育を終える」と繰り返す。内務相はHCI(同化政策高等評議会)およびINSEE(国立統計経済研究所)の調査結果を元にしている数字だと主張。ところがHCIのゴベール総裁は、そんな報告はしていない。第一、移民出身かどうかで調査することは禁止されている、と怒りの発言。INSEEも、この数字は事実無根と反発。逆にINSEEの調査では「同じような経済状況、家族状況の子供たちを比較すると、移民出身でない児童たちより、移民出身の児童たちの方が、留年せずに容易にバカロレアを取得している」という結果が出ている。同研究所組合は所長に、内務相に釈明を求めるように強く抗議することを要望した。
これでゲアン内務相、少しは反省するか、あるいは失言暴言を繰り返すか、注目したい。(真)