社会党は、来年の大統領選挙で同党の最有力候補とみなされていたドミニク・ストロス=カーン(DSK)が米国で逮捕され、6月28日には大統領選予備選挙立候補の締め切りが控えているだけに混乱状態に陥っている。DSKが出馬するなら立候補を控えると声明してきたマルチーヌ・オーブリ第一書記(60歳。写真左)は、相変わらず立候補声明はしていないが、DSK逮捕以来支持率が6%増加。立候補済みのフランソワ・オランド前第一書記(56歳。写真右)に接近し、DSK派の出方次第とはいえ、10月初めに行われる予備選挙はこの二人の争いに絞られていきそうだ。
マルチーヌ・オーブリは1950年パリで生まれる。父はミッテラン大統領時代に経済相、その後欧州委員会委員長を務めたジャック・ドロールという政界の名門の出だ。国立行政学院を卒業して労働省や国家評議会の事務局に勤務。1981年、社会党のクレッソン内閣で労働相、1997年から2000年にかけてはジョスパン内閣の雇用・連帯相という要職に就く。就労時間を週39時間から35時間に短縮するという、画期的な法律を成立させたことでよく知られ、この法律の骨抜きに懸命になっている右派政権にとっては目のかたき。フランス人あるいは正規の外国人滞在者は自動的に社会保障の恩恵に浴することができ、収入が一定のレベルに達しない場合は医療費が 100%カバーされるという普遍的医療保障CMU制度を施行させたのもオーブリだ。2001年からは、もっぱらリール市長として敏腕を振るっている。今シーズンはリールのサッカーチームLOSCがフランス杯と1部リーグで二冠を達成し、彼女の大きな笑顔が何度もテレビに大写しになった。この勝利の勢いで予備選挙をもというのが、オーブリ派、そしてオランド反対派の願いだろう。
オランドは1954年ルーアン生まれ。父は医師だった。1980年に国立行政学院卒業。1988年からコレーズ県の国民議会議員選挙で連続選出されている。同県テュール市の市長でもある。1997年から2008年までの11年間、社会党第一書記として党内の改革に乗り出すが、その分、敵も多いといわれている。「大統領になることは一つの達成であり、機会があったら自分の番を逃すことはない」と常々政治的野心を語っていたが、2007年の大統領選挙では、セゴレーヌ・ロワイヤル(ポワトゥ・シャラント地方圏議会議長)に候補者の座を譲る。オランドは、貫禄が売り物だったこれまでの政治家とは違い、偉ぶったところがなく、温厚でユーモア好きだが、「すべすべしすぎていて頼りない」という批判もあった。そのせいか、最近は徹底的なダイエットを行い、これまでのふっくらとした顔立ちの肉が落ちて鋭くなり、演説にも迫力が出てきている。(真)