コルス(コルシカ)島は、海岸線から山地がせり上がり、そんな自然の中で放し飼いにされた羊たちは、香り高い亜高山帯の草花を食べている。そこで、コルス島のチーズといえば、羊乳のチーズ。といっても、ブロッチウと呼ばれるフレッシュチーズ(山羊乳あるいは羊乳と山羊乳をミックスしたものも多い)をはじ
めとして、コルス各地で熟成度もさまざまな数多くのトム・ド・ブルビが作られている。熟成期間が短いものは、身もまだ白く柔らかく、クリーミーな味わい。
熟成が進むにつれ、今回味わったトムのごとく、身は美しい象牙色になり、羊乳ならではのこくとうま味が出てくる。
コルス島の山の中にあるレストランで、U Casgiu
Merzuと呼ばれるチーズを食べたことがある。カーブから運ばれてきた陶製の器の中に、身はほとんど黄土色ともいっていいような大きなトム。誰も手を出
さない。ついてきたスプーンですくって味わった。複雑神妙なおいしさ! 店を出たとたん、友人は「見なかった?
チーズの中に5ミリくらいのウジ虫がうじゃうじゃ!」。U Casgiu Merzuは「腐ったチーズ」という意味らしい。(真)