
快晴の空のもと、第79回カンヌ国際映画祭が無事に開幕した。今年は日本映画が例年以上にエントリー。コンペ作品に3本が選出されたのは、25年ぶりの快挙となった。
全22本のコンペ作品の上映が始まる13日、トップバッターとして颯爽と登場したのが、カンヌの常連、深田晃司監督の『ナギ・ダイアリー』である。多作な深田監督は、昨年もカンヌ・プレミア部門で『恋愛裁判』が上映されたばかり。10年前には、ある視点部門で『淵に立つ』が審査員賞に輝いている。
昨今はどんな巨匠であっても、コンペ入りは決して当たり前なことではない。数日前には、ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォークが、コンペに落選したことが報道されていた。超激戦区のコンペ入りを果たしただけでも、大変価値あることなのだ。(ただし、カンヌはフランス映画に甘い傾向が。他の国際映画祭が自国の作品に甘いのと同じでことある)。

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.
『ナギダイアリー』は芸術家の女性2人が主人公の人間ドラマ。田舎暮らしをする彫刻家の寄子(松たか子)のもとへ、都会に住む建築家の友梨(石橋静河)がやってくる。元家族(寄子は友梨が別れた夫の姉)である二人の前には、友人知人などが現れ、互いに気持ちを伝え合い、過去や現在にあらためて向き合う大事な数日間となる。
筆者はてっきり “ナギさん”がいるのかと思って見始めたら、なかなか出てこない。それもそのはず、それは架空の街の名前だった。モデルとなった街が、「岡山県奈義町」なのだ。
14日には本作の記者会見が開かれた。会場からは、主人公たちの職業に関連して、「芸術」についての質問が飛んできた。深田監督は自作に重ね、熱く持論を展開。「私たちは表現をすることで、『私にはこういう風に世界が見える』ということを可視化、具体化していきます。大事なのは、表現する過程でよく観察すること。世界への解像度上げる過程にこそ、表現の一番の価値があるのでは」と語った。劇中では、寄子は彫刻のモデルとなった友梨をじっくりと観察し、そして、作品として表現をしていくのだ。

話題は自然な流れで、AIにも触れてゆく。「A Iで絵を描こう、動画作ろうとすると、“過程”をすっ飛ばして、結果を アウトプットできる。その時に、表現するその人自身が世界の解像度を上げていく、世界を知っていく過程が、表現の現場からどんどん失われてしまう。そこを見過ごされてしまうことは危いことでだと、皆さんと(公式上映で)映画を見ながら考えていました」と、A Iの台頭に警鐘も鳴らした。
現在、国際映画祭の場でAIは大きな争点。カンヌでも避けては通れない話題だ。映画祭初日の審査員記者会見の場でも、審査員のデミ・ムーアが、AIについて語っていた。「AIはすでにここに存在しています。AIとの戦いは負け戦。共存の方法を考える方が、より価値のある道だと思います」「本当に恐れることは何もありません。なぜなら、AIに置き換えることのできない芸術の源泉は、物質的なものではなく、魂の中に宿るものだから」と語り、話題となっていた。

映画祭全体を通して、世界の映画人たちが同じテーマで言葉を紡いでゆくのを見るのも、興味深い時間である。日々、問題の渦中で生きる映画人たちから、今年はどんな言葉が出てくるのか、最後まで楽しみつつ、観察していきたいと思う。(瑞)

松たか子 石橋静河/松山ケンイチ
監督・脚本:深田晃司
配給:スターサンズ
© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.https://starsands.com/nagidiary
