「submersion」(シュブメルシオンと発音)は「完全に水でおおわれること」。1月27日、テレビ局LCIで移民について問われたバイルー首相は「自分の国を見失うほどに移民が増えて、フランスが沈没しているという印象を持つようなると、移民を拒否するようになる。(…)フランスはそんな状態に近づいている。とりわけいくつかの都市や地方では」と発言。
「submersion migratoire(移民による沈没)」をモットーにしている極右の国民連合(RN)党幹部セバスチャン・シュニュは、「イデオロギーの闘いで勝利!」と大歓迎。これに反し、与党の一部、左派は反発。社会党は、首相がこの発言を撤回しない限り、政府との予算をめぐる討論を拒否するとした。社会党にそっぽを向かれると、バイルー内閣は存続が危うくなる。1月16日、左派連合がバイルー内閣を不信任案で解散させようとしたが、そのなかで、社会党は「不信任案には投票しない」協定を政府と結んでいたのだ。
しかし翌日の国民議会で、バイルー首相は「だれもが、(不法移民をかかえている)マヨット島だけではなく〈submersion〉という用語が一番適していると判断するだろう」と弁明した。そしてこの「submersion migratoire」がマスコミにすっかり定着。フランスメディアの沈没ともいえるだろう。