社会が変われば性生活も変化する。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)が中心になって行ったフランス人の性に関する調査が11月13日に発表され、その内容をメディアが一斉に報じた。20年ごとに行われるもので、5年間をかけ、31500人の15歳から89歳を対象としている。
社会の変化といってすぐ想起される のがデジタル化だ。出会い系サイトやアプリが花盛りの昨今、18〜29歳では一回でもネットやアプリでパートナーを見つけたことがあると答えた人が、女性では39.4%、男性は43.5%にのぼった。これが、世代が10年上がるごとに約10ポイントずつ下がってゆく。30歳未満だと、 お色気写真やビデオを送り合うのも37%の女性、40%の男性が経験している。その分、数年前、政権内の40代の幹部がパソコン画面越しに若い女性と色事にふけっていたところを相手の女性が録画し、政治家がパリ市長選に出馬した時にそのビデオを世に流布したような嫌がらせも増加しており、30歳以下では33.2%の女性、24.7%の男性が嫌がらせの対象になっているという。慣れない人は要注意だ。
それにしても携帯から手軽に出会いの機会が得られ、セックス情報が流入してくれば、さぞかし今の若者は初体験も早いだろうと思いきや、今回の調査では18.2歳(女)と17.7歳(男)。2006年よりも遅くなった(女 17.6歳 、男 17.2歳)。一方で、高齢者の現役が意外と多いのがわかったことは今回の発見だ。高齢化社会を反映し、本調査では初めて (自宅に住む)70代、80代も調査対象となったが、男性は80〜89歳においても40%が現役と回答。女性は11%にとどまった(とはいえ11%)。
同性愛に関する偏見が薄れ、18〜29歳の37.6%の女性が、同性に惹かれる、または同性とのセックスの経験があると答えたのも今回の特徴のようだが(男性は18.3%)、もうひとつの大きな変化は自慰をすると答えた女性が92年は42%だったのが、今回は72.09%まで増加したことだ。フェミニストたちのデモでクリトリスのシンボルマークが公道で掲げられたり、セックストーイが普及するなど、女性が自身の性や悦びを語ることのタブーが払拭されつつあるのだと社会学者は指摘する。
セックスの行為も多様になっていて、必ずしも挿入がなくても、例えば前出の、画面越しにイチャイチャして実際には接触がない場合もセックスとみなされる。挿入があっても口のほか、場所もいろいろ、という感覚が浸透しているらしい。ひとりの人の一生のパートナーの人数も、1992年は女性は3.4人だったのが、今回の調査では7.9人に倍増。男性は92年の11.2人から16.4人に。頻度は過去4週間で6回 (女)、6.7回(男)と、2006年よりは少ないが(女 8.6回、男 8.7回)、「セックスライフに満足」は女性45.3%、男性は39%とまずまずの数字。
最後に、この調査について多くの人の証言を集めたラジオ番組を聞いて気づいたのは、多くの人がパートナーとの話合いによって、どんなセックスがいいかとか、頻度などに関しても妥協点を見つけているということだった。言葉で表現するのが苦手な人には辛いが、セックスに関しても言葉は大切なようだ。(六)