【cinéma】『 The Lost King 』 不人気国王の名誉回復へ
2012年8月イギリス中部の町レスターで、長らく行方不明となっていた英国王リチャード3世の遺骨が発見された。発掘場所は教会跡地の駐車場の地下。この驚きのニュースは、瞬く間に世界を駆け巡った。映画『クイーン』(2006年)で知られる英国の大御所スティーヴン・フリアーズは、発掘の立役者たる実在の歴史愛好家の女性に興味を抱き、お得意のSo Britishな人間ドラマに仕立ててみせる。
フィリッパ(サリー・ホーキンス)は有能な会社員。だが、上司から正当に評価されず、不満も抱える。ある日、演劇を鑑賞したことからリチャード3世が気になり出す。この15世紀の英国王のイメージは最悪だ。権威に執着する強欲さ、家族さえ手にかける残忍さ、背骨が曲がり「ヒキガエル」のような醜い容姿……。それはシェイクスピアによって決定づけられたという。だが、歴史は勝者によって上書きされるものでもあるだろう。
フィリッパは同国王の研究会に近づき、会社を辞めて調査を開始。国王の真実の姿や埋葬場所を探し始める。2人の息子や元夫は呆れつつも、その無謀な挑戦を陰で支える。劇中では中世の衣服に身を包んだリチャード3世が、現代の街に現れる。その切なそうな姿が見えるのはフィリッパだけらしい。周囲から理解されぬ者同士だからこそ、分かり合えることもあるのか。
史実と幻想が絶妙に交錯するフィールグッドムービー。80歳を超え、軽やかな躍進を続けるフリアーズ監督は、間口の広い快作を連打する。「偉大な作品を残そう」などという野心よりは、ソツのない職人的演出で、ファンを楽しませることを好んでいるようだ。(瑞)
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