コロナ禍の最中に亡くなったクリスト(1935-2020)は、2021年秋に凱旋門を「包む」はずだった。そのプロジェクトに協力したポンピドゥ・センターが、クリストと妻ジャンヌ=クロード(1935-2009)のパリでの活動をテーマに展覧会を開いている。その会場で上映中のドキュメンタリー映画が、抜群に面白い。
故国ブルガリアを出て1958年にパリに来たクリストは、将軍の令嬢ジャンヌ=クロードと恋に陥った。奇しくも二人は生年月日が同じ。その一心同体カップルが、ポンヌフ(橋)を包む計画の実現のために1975年から10年間奔走した様子を追った映画だ。二人にとっては制作の過程も作品の一部だ。ところどころに二人の馴れ初めや家族の話が挟まれる。当時のパリ市長シラクがパリ市民の反応を心配して反対していたこと、ミッテラン政権が誕生したことが実現の追い風になったことなど、政治も絡んで異色のアーティスト映画になっている。映画を先に見てから会場をゆっくり回ると、手紙や写真などの資料をより面白く見ることができる。 来年はクリスト夫妻のスタッフが、本人たち抜きで凱旋門を包む。クリストが凱旋門のデッサンをするビデオを見ると、覆われた凱旋門の完成が楽しみになる。(羽)
Centre Pompidou
Adresse : Pl. Georges-Pompidou, 75004 ParisURL : www.centrepompdou.fr
火休、11h-21h、14€/11€ 要ネット予約 10月19日(月)まで