サンジェルマン市場といえば、場内は変わらずマルシェだけれど、路面店は大手企業が軒を並べた味気ないものになってしまったものだ。そんな中に、誇示せずとも多くの顧客を持ち、愛され続けているワイン屋さんがある。カウンター2席、場内側のテラスに3テーブル、路面テラスに4テーブルほどのスペースは、「やぁ、ジョルジュ!」とやってくる常連さんたちでいつも賑わっている。ワインを飲みに来ているのか、ジョルジュさんに会いに来ているのかわからないくらいだが、きっとその両方だろう。
お店で売られているワインの大半はナチュラルワインで896号で書いたClos du Tue-BoeufやRomuald Valotのワインが数多くそろう上に、値段も10€前後が多く見つかる。購入したワインを店内で飲むためのチャージ “Droit de bouchon” も、4€と良心的。サービスのつまみも、その自然な風味で有名なLucques産のグリーンオリーブだったりと、さりげないこだわりが垣間見える。
特筆すべきは、食べ物の持ち込みが可能という、今時珍しい寛容さ。市場の中の肉屋やチーズ屋でアペロのつまみを買って「ジョルジュのとこで食べたいんだけど」と言うと、食べやすいように切ってくれる。持ち込み可とはいえ、ワイン屋という場所に適したものにとどめる気遣いは持っていたい。また、バーというよりはやはりワイン屋なので、グラスで飲めるワインは常時2~3種類。ボトルを取って、飲みきれなければ持ち帰ればいいと毎回思いつつ、つい飲み干してしまうどころか、2本目に進んでしまいがち。
6区というこの界隈に、市場で買った食材をつまみにワインを開ける、なんて古き良き人情味あふれる空間がいまだ存在することの奇跡に、素直に感動を覚える。(み)
Bacchus & Ariane
Adresse : 4 rue Lobineau, 75006 ParisTEL : 01.4634.1294
アクセス : M° Mabillon
9h30-13h/16h-20h 日午後&月休