2016年に公開されたマーティン・スコセッシ監督による『沈黙 - サイレンス -』に先立つこと45年、1971年に公開された篠田正浩監督の『沈黙』がフランスで今週公開になった。
篠田版『沈黙』には、著者の遠藤周作が自ら脚本に参加。宮川一夫(『羅生門』『用心棒』『影武者』など)のカメラが、厳しく美しく雄大な五島列島の自然 を映し出す。波の音、降り止まない梅雨の雨、蝉の鳴き声などとあわせて、そこに生きる人間の小ささを痛感させる。
ポルトガルから布教のため日本にやってきたイエズス会のフェレイラ司祭に丹波哲郎。フェレイラ神父は日本人信者が拷問にかけられるのに耐えられず棄教し仏僧となっていたが、その神父に会おうとやってきたロドリゴ神父にディヴィッド・ランプソン、ガルペシンプにはダン・ケニー。遊女に扮する三田佳子、そしてキリシタン武士・岡田三右衛門の妻・菊を演じる岩下志麻も、この映画のお楽しみだ。
リュートが奏でるルネサンス期の旋律と、その完全なる調和の世界を斬るように重ねられる武満徹の音楽が物語の西洋と東洋との対立と並行するのも素晴らしい。ポスターは北斎の「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」の富士山と消して、波の下に十字架を立てたもの。フランスで観客をひきつけるには効果があるのかもしれないけれどいただけない。(美)
読者5名さまに、篠田正浩監督『沈黙』チケットをさしあげます。
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