『CLOSE』のルーカス・ドン監督
バレリーナ志望のトランスジェンダーを描く 『Girl/ガール』(2018)で、鮮烈なデビューを飾ったベルギーの俊英ルーカス・ドン。カンヌ映画祭新人賞受賞後、彼のもとには多くの企画が舞い込んだが、その次の作品も「本当に語りたいこと」にこだわったという。過去を振り返り昔通った小学校を訪れ、そして誕生したのが本作だ。今年のカンヌ映画祭でコンペ入りし、文句なしのグランプリを獲得した。
13歳のレミ(エデン・ダンブリン)とレオ(ギュスターヴ・ド・ワール)は幼なじみで、家族ぐるみの付き合い。猫のようにじゃれ合う親密な間柄。だが新学期に入り、ふたりの仲をいぶかしがる同級生も。次第にふたりの関係の雲行きも怪しくなる。
ローティーン男子の友情を見つめた作品だが、あるようでなかったドラマかもしれない。自身がゲイの少年だった監督は「パーソナルな映画」と語ったが、失った友情や子供時代の終わりの切なさ、青春の残酷さや美しさが凝縮されており、普遍的な感動を呼ぶ。
舞台は南仏グラース近郊で、レオの実家は香水用の花の栽培家。花畑を走る少年を見ているだけで、なぜか胸が高鳴ってしまう。ミニマルな物語とシンプルな設定で、優しくも痛々しい人生の真実を見事に切り取った。ルーカス・ドンはゲイの作家というより、ヒリヒリした青春の痛みの監督と呼びたい。昨今フランスの映画記事は「観客が減った」と嘆く話題ばかり。だが本作を映画館で鑑賞すれば、多くの人にとって最高の映画愛リハビリになるだろう。(瑞)