グラスゴー住まいのイギリス人の友人エレナさんが、グラスゴーはずれ、パルティックという下町にあるパブ、「The Lismore」に連れていってくれた。庶民的なにぎわいの店で、長いカウンターの後ろの棚に、シングルモルトのボトルが数えきれないくらい並んでいる。
どれを飲もうか途方にくれていると、すかさずエレナさんが 「まずグラスゴー近辺に蒸留所があるオーシャントッシャンと、私の好みの、スコットランドで一番小さい蒸留所エドラダワーのものにしましょう」。
主人らしき人が、1オンス (約30cc)のメジャーカップで量って小さめのグラスに注いでくれた。少しこぼすように多めに入れてくれるのが粋で、二つ合わせて6ポンド(7.5€ちょっと)という安さだ!どちらもスモークの香りは薄め、まろやかでバニラやハチミツを思わせる軽い甘さあるが、エドラダワーの方に奥行きがあった。
カウンターに戻り「ピーティー(スモーク風味)でも、あまり知られていないものを」と注文したら、主人の目が光った。そして地下に降りて、ひと瓶抱えてきた。「ピート・チムニーです」とグラスに注いでくれた。ソファー席に持ち帰り、エレナさんと乾杯し、ひと口含む。スモーク具合はきつめだが、どこまでもまろやかで、うっとり。店の喧騒がさっと引き、潮風が心に吹き込んでくるようだった。
スコットランドでは、どんな小さなパブに入ってもシングルモルトが10種類くらい置いてあるし、オーバンやマル島のトバモリーの蒸留所を訪れたし、「Fishers」では食後にブナハーブンの18年物という銘酒を味わえたし、ウイスキー文化の懐の深さに酔いっぱなしの2週間だった。(真)
The Lismore : 206 Dumbarton Road, Glasgow +44(0)141 576 0102
グラスゴー中心からバスや電車で簡単に行くことができる。