「大統領閣下、私たちはアメリカで先住民族の芸術品を所蔵し、彼らの芸術、文化と権益を守るための文化施設の責任者です」と始まる嘆願書が、昨年、オランド大統領や外相、文化相、法相らに送られた。先住民研究の権威とされる北アリゾナ博物館館長ら6人の連名の書面は、2013年からパリで、アメリカの先住民が神事に使う仮面などの競売が行われていることに抗議するものだ。
特に問題視されているのが、アリゾナ州に住むホピ族の「カチナ」と呼ばれる精霊の木彫人形や仮面だ。これらは単なる工芸品ではなく「精霊が宿る」ものとされ、競売にかけるのは冒涜(ぼうとく)であり、また、部族全体の所有物だから、ホピ族に属する人でも譲渡することはならず、流出したものは部族に返還されるべきだとする人々が、パリのドルウォー競売所前で抗議するようになった。Survivalと呼ばれる原住民の権利擁護団体が、パリ大審院に告訴し競売の停止とオブジェの返還を求めたが、裁判所は競売を「合法」とし、2013年4月には70点が合計約93万ユーロ、12月には55万ユーロで落札された。在仏米大使が競売中止を仏政府に要請したが状況は変わらず、今年5月も競売で1880年代の仮面などが落札された。〈Idol no more〉や〈アメリカ先住民族との団結〉などの協会は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」にも反する行為だとして、今後も競売会社への抗議を続けていくつもりだ。(美)www.csia-nitassinan.org/