サン=テグジュペリ作の『星の王子さま』は、全世界で聖書の次に読まれている元祖ベストセラー。もはやフランス文学というより、国境を越えた «地球の古典»の域。だから世界の才能を集め映画化に挑むのは、それほど無鉄砲な計画ではないのだろう。製作は若きフランス人プロデューサー、ディミトリ・ラッサム。CGアニメとストップモーションが同居する斬新なアニメ化に、9年の歳月と6千万ユーロ (約80億円)の予算をかけ完成まで導いた。監督は『カンフー・パンダ』のアメリカ人マーク・オズボーン。CGキャラクター監修者は『塔の上のラプンツェル』の四角英孝だ。
進学校入学を目指し、教育ママが決めた生活スケジュールをこなす9歳の女の子。子供心を失いかけた彼女の前に現れたのは、飛行機を操る奇妙なおじいさん。実は彼こそが、かつて星の王子さまに会ったパイロット。やがて年の離れたふたりは、星の王子さまとキツネのように、かけがえのない友情を紡いでゆく。
原作の世界を傷つけぬよう「物語の中の物語」という二重構造を持つ本作。バラやキツネ、自惚れおじさんなど原作のキャラクターも総登場させながら、「大切なものは目に見えない」という至言を浮かび上がらせている。対象年齢は3歳~。(瑞)