セーヌ川に浮かぶ、ふしぎな筏(いかだ)。いったい、なんだろう。
聞けば、数百もの木を組んで作られたこの筏は〈Train de bois : 木の汽車〉。ブルゴーニュのニヴェルネ運河からイオンヌ川、そしてセーヌと、275kmを3週間かけて下り、6月27日パリに到着した。F・ミッテラン国立図書館の前、シモーヌ・ド・ボーヴォワール橋近くに停まっている。
16世紀、すでに人口が30万人に達していたパリは、主要エネルギー源だった薪の不足により、都市の発展に歯止めがかかっていた。そこで、ブルゴーニュ地方のモルヴァンの森に目が向けられた。森の木を切って流送すれば、暖房もオーブンを使った料理もでき、快適な都市としての繁栄が可能になるというわけだ。こうして水運の国・モルヴァン県は、3世紀以上にわたって首都に薪を供給した。その筏と流送の様子をFlotescale協会が再現したのがこの〈木の汽車〉だ。
筏が停泊するベルシー港では、7月4日まで«Flottage(筏流し)»という展示会が行われる。ブルゴーニュのイランシー、サン・ブリ、シトリ、クランジュ、シャブリなどのワイン醸造者、サクランボの生産者などが参加する特産品フェアが開かれ、水運の歴史だけではなく、豊かな観光資源もパリの人々にアピールする。
7月5日パリ市内を通り、郊外のブローニュ・ルグラン港へと向かう。1877年以来のことだそうである。(べ)